3−3−2 トレンチ調査位置の検討

以上の結果から,トレンチ候補地点を整理すると図4−2−1(図4−2−1−1図4−2−1−2)となる.このうち,市渡地区の地点Cは用地交渉上難航が予想される.桜岱地区の地点Fは遺跡指定地内である.従って,両地点は除外する.

桜岱地域の地点Gでは,堆積物に明瞭な変形が認められなかった.この地点でトレンチを掘削しても,断層自体が認められない可能性がある.この周辺では,明瞭なリニアメントは他に認められないことから,富川断層のトレンチ調査をする場合には別の地域で再検討する必要がある.ただし,平成8年度の調査結果から,桜岱の北方は用水路が位置し,南方はリニアメント自体が不明瞭であることが明らかになっている.

地点@は,沖積錐堆積物が厚く変位も不明瞭なこと,また,断層自体が山側を通過している可能性が残っており,トレンチ位置としては難がある.従って候補地から除外する.

地点Aは,リニアメントの北方延長に位置しており,沖積錐堆積物中には年代測定の可能な腐食層を頻繁に挟んでいることが期待される.しかし,トレンチの深度5mで断層に到達できるかどうかは,判断できない.

地点Bは,5m程度の掘削によって渡島大野断層を捕捉できる可能性は大きい.しかし,12ka以降の堆積物は薄く,最新活動期を精度よく押さえるにはやや難がある.また,15ka前後の堆積物のため複数イベント(つまり活動間隔)を認定できる可能性は小さい.

地点Dは,大野川の氾濫原で,リニアメントは不明瞭で位置の特定が難しい.また沖積層は最新イベントより新しい堆積物である可能性が大きい.従って候補地から除外する.

地点Eは,北教大函館校によるトレンチサイト3である.最新活動期は特定できないが,より深く掘削することにより,1.7万年以前のイベントを読むことができる可能性がある.

以上,候補地点としてはA,BおよびEが考えられる.しかし,上述のように,市渡地域では,最新活動期と活動間隔の解明という2つの目的を1〜2ヶ所のトレンチで解決できる可能性は少ない.この目的の達成のためには3ヶ所での掘削が必要である.即ち,地点Bで掘削し,断層面を確認して,その走向傾斜から,地点Aの詳細位置を決定する.地点Aの掘削によって断層変位・最新活動期を確認する(仮に変位が確認できない場合でも,年代決定精度は高いので最新活動期の絞り込みは可能である).また,複数活動イベントの認定のため,地点Eを再掘削してより古い(深い)活動イベントを確認する.