(1)<市渡地域>

1)市渡の南部から中央部で,Ko−hテフラ(17ka)を欠き,Ngテフラ(12ka)をのせる段丘堆積物が発達することが確認された(6面).6面は従来,沖積扇状地面と考えられており,断層リニアメントはこの面を切っていることから,当初有力なトレンチ候補地とされていた.なお,リニアメントは北方に不明瞭となるが,その周辺には,明瞭な扇状地堆積物が認められ,深度2m程度までは5kaより新しい地層であることがわかった.

2)オーガー(最深2m),検土杖(1m)調査およびピット調査の結果,リニアメントが比較的明瞭な,6面を切る断面(G3−G7,G13−G8)では,リニアメントを境に堆積物の層厚や構成に変化が見られ,断層による影響が認められた.扇状地堆積物(K13−K10,K6−K7,K5−K1,K14−K16)では明瞭な変化は見られないことから,断層は2m以深に埋没しているか,あるいは別の場所を通過しているかのいずれかである.また,市渡南部の大野川氾濫原にあたる断面(G16−G17)では顕著な変化は見られなかった.

3)以上の結果,市渡地域のトレンチ位置としては,市渡地区では円通寺より北へ観音神社付近までに限定される.トレンチ掘削によって確実に断層が捕捉されると推定されるのは,G3−G7,G13−G8付近である.