2−1−7 断層変位地形および変位量

活断層の分布を図1−2にしめす.また,地形面の垂直変位量と変位速度について図1−4にしめす.以下に,函館平野西縁断層系の断層変位地形について各断層毎に記載する.

1A−1断層

 七飯町仁山でNW系のリニアメントがみられる.地形面は5面を撓曲させている.変位量は7mであることから平均上下変位量は約0.3m/kyrと推定される.この撓曲崖の断層露頭を発見した(図1−3).断層は,Ko−h,Ngのテフラを切断している.この関係は,鴈澤ほか編(1995)のトレンチでみられた関係と同じである.

1A−2断層

大野町市渡でNNW系のリニアメントがみられる.地形面は6面を撓曲させている.1A−1断層のリニアメントの南方延長部であるがトレンドは大きく異なる.変位量は5mであることから,平均上下変位量は約0.25〜0.5m/kyrと推定される.

1A−3

大野町向野でNW系のリニアメントがみられる.地形面は2面,4面,4‘面,5面を変位させており,観音山のやや東から撓曲崖が発達している.1A−2断層のリニアメントの南方延長部である.2面,4面,5面の変位量は5m,12m,25mであることから,平均上下変位量はそれぞれ>0.5,0.5,0.4m/kyrと推定される.

大野川では富川層が30〜70°程度に東傾斜しているのが観察される.

1A−3'

大野町向野でNS系のやや不明瞭なリニアメントがみられる.地形面は沖積面を変位させている.この撓曲に対応する地下構造が地震探査で確認された.

1A−4

上磯町清川から大工川にかけてNE〜NS〜NW系に逆くの字に屈曲するリニアメントからなる.大工川では3面を変位させている.1A−3,3'断層のトレンドとは大きく異なり,文月付近でリニアメントは不明瞭になり,くの字型に屈曲する.変位量は15m以上であることから,平均上下変位量は約0.1m/kyr以上と推定される.

1E(新称)

1A−3の背後で,5面が緩く撓んでいる.NW系の断層.

1C

1A−3の背後で,4面,5面が撓んでいる.NW〜NS系の断層.

1B

八郎沼の東側をとおるNW系の断層.2面,4面を変位させる逆向き低断層崖と,5面が撓んでいる.

1D

八郎沼の西側をとおるNNW〜NNE系の断層.変位量は,各6m,5.5mであることから,平均上下変位量は0.05m/kyrと推定される.

2D(新称:向野断層)

 今回確実度Uの断層.変位規準となる地形面がないが,山地と丘陵地のほぼ境界付近を通るリニアメントが認められる.大野変電所の西側に向野産業廃棄物処理場があり,そこで富川層の褶曲構造がみられる.富川層はそこでは50°東傾斜〜90°まで急立し丘陵地に没し,文月層も東に8度程度傾斜していることから,断層の存在が推定される.今回この断層を向野断層と呼ぶ.基準となる地形面がないので変位量は不明だが,活動度はC級オーダと推定される.

本断層の南方延長部には,2A−1,2A−2断層のリニアメントが伸びているが関係は不明.

2A−1

上磯町の添山,桜岱をとおるNE〜NS〜NNW系に逆くの字に屈曲するリニアメントで特徴づけられる.撓曲崖末端に4面堆積物の露頭があり(現在は芝が貼られてみえない)ほぼ水平の構造で撓曲はしていない.

2A−2

上磯町の富川をとおるNE系のリニアメントで特徴づけられる.2A−1断層との間ではリニアメントが不明瞭となり,トレンドは「くの字」に屈曲する.2面の撓曲崖を形成している.変位量は54m以上であることから,平均上下変位量は0.4m/kyr以上と推定される.富川層中に数cmのずれをともなう小断層がみられる.

2B

2A−2断層の背後のリニアメント.2面を変位させている.

2C−1(本報告にて再定義)

2A−1の背後にほぼ並走する逆向きの断層.富川層中に断層がみられる.

15)2C−2

 2A−2の背後にほぼ並走する逆向きの断層.茂辺地川層と富川層の地層境界に一致.富川層などに西側への撓曲は見られないことから,不整合面を利用して変位していると思われる.