5−3−3 防災上の取り組み

平成8年度、9年度の2カ年にわたる調査で、関東平野の北西縁に位置する平井・神川両断層の存在が確認され、より詳細な断層位置を決定した。特に、平井断層については本調査で初めて、2カ所の明瞭な断層露頭が確認された。これらより、両断層の最終活動時期が判明した。また、この結果はトレンチ調査の結果などとも整合的であった。

両断層の最終活動時期は、それぞれ20000年〜8000年前程度となった。一方、活動間隔については、神川断層では、不明であったが、平井断層では約2万年程度と想定された。

これらの結果より言えることは、平井・神川両断層は、活動度はきわめて低いが、活断層そのものであり、防災上、全く無視することはできない存在であるということである。

また、今回調査した平井・神川断層だけでなく、一般的に一つの内陸活断層は普通数千年に1回の割合で活動すると考えられている。これは地質時代からすれば、非常に短期間であるかもしれないが、普通、人の生活していく時間で考えると、途方もない長さである。

平井・神川断層は、さらに長周期の2万年程度の活動間隔を有すると考えられ、最終活動時期20000〜8000年ということを考えあわせると、次の再来時期を推定することは一応、可能である。しかし、2万年程度の活動周期を持つ断層については、その活動時期については数千年の幅を持つのが普通である。また、最終活動時期にも20000〜8000年とかなりの幅があるため、それらすべてを考慮すると、断層が活動する可能性は非常に低いといえる。したがって、これだけ長い再来間隔で、かなりの低確率で遭遇する自然現象に対しての対応では、いたずらに騒ぎ立てるよりも、次の点に留意することが、むしろ重要と考えられる。つまり、本当に重要な対応は、1)活断層や地震災害についての基礎知識を充実させ、自分の住んでいる地域の災害に対する危険度を十分に理解して、弱点に対して、適切な対応ができるよう理解度を深めるとともに、2)災害時に対する基盤整備を計画性を持って着実に行っていくことであると考えられる。

具体的には以下に示したようなソフト、ハード面での整備が必要である。

表5−3−2 防災への取り組みの手法と問題点

また、災害時には緊急の援護、救援の拠点とするため、決して壊れてはならないもの、すなわち病院や学校施設、及び市町村役場などについては、断層変位による建物の破断で破壊されたり機能が低下したりしないような配慮が必要である。また、緊急時に対応できる基盤の整備を進めておくといったようなことも、必要であると思われる。

少なくとも、活断層が通過する藤岡市、近接する高崎市、前橋市などの大都市については、想定される地震動に対する被害想定を行い、計画的な地震防災対策を今後も進めていくことが望まれる。また、活断層の直接の変位による重要構造物の被害が軽減されるよう、計画的な配慮が望まれる。