(1)活動間隔

・神川断層

今回の調査では、AT,BPテフラ層の変形及び基盤までの深度の違いは認められたものの、それらが何回のイベントによって形成されたものか、区別するのは困難である。そのため、現段階では活動間隔を推定するのは、神川断層単独では難しい。

また、今回の仮説では、BPテフラ層堆積以降に、最終活動時期があるとした。しかし、テフラ層の変形は、かなり緩やかな変形であるため、当時の地形の反映である可能性がある。そのため、最終活動時期についてはかなり誤差が含まれることになる。

以上より、今回の調査結果のみで神川断層の活動周期まで述べるのは、時期尚早であると思われる。むしろ、今回得られた結果は、調査対象の2断層を含む関東北西縁断層帯の調査が進展するのにあわせ、統括的に評価していくのが望ましいと考えられる。

・平井断層

平成8年度の調査結果及び今年度の保美地区の調査結果を踏まえて、平井断層の活動間隔について検討を行った。

河道部分の露頭からは、ATテフラ及びBPテフラ層が挟まれる段丘礫層が変形しているため、最終活動時期は、ATテフラ層及びBPテフラ層の堆積後で、約2.0万年から1.7万年前であると推定される。

一方、この露頭では、段丘砂礫層中に挟まれるシルト層が、約2mの食い違いを見せる。これは1回のイベントにより形成された可能性が高いと思われる。また、このシルト層から産出した材化石の14C年代値は38700±820yBPとなった。この断層が、さらに同一の段丘砂礫層中に挟在するATテフラ層とBPテフラ層を変形させているとすると、少なくとも最終活動時期は約1.7〜2.0万年以降となる。一方、簡易トレンチで認められたシルト層は約8000年前の年代値を示し、この堆積面は、河道部分の新しい段丘面に対比される。また、この層は変形を受けていない。したがって、最終活動時期は2万年前以降、8000年前以前となる。また、露頭観察及びトレンチ観察では、最終活動よりももう一つ前の活動は見いだすことができなかった。

ところで、“日本の活断層(1991)”によれば、平井断層の平均変位速度は0.1m/1000年となっている。また、平成8年度に調査した、平井断層上に位置する西平井地区の高位段丘面は、同断層を挟んで約8〜10m程度、垂直方向にずれが生じている。この段丘面では御岳−奈川(On−Ng)のテフラが見つかっており、テフラ層の年代値は約8万年前とされている。そのため、この段丘面の年代は、10万年〜8万年程度と推定される。よって、精度は低いものの、おおよそのイベントの再来周期は、2万年程度と見積もられる。

以上より、最終活動時期は2.0万年以降、8000年以前、その前の活動時期は、特定できない。高位段丘面は、8万年前のテフラを挟在しており、8〜10m程度の比高差が認められる。再来間隔は約2万年というようにまとめられる。しかし、今回の調査によって得られたデータのみで活動間隔を推定するには、やや精度が低いと考えられる。そのため、平井断層の活動間隔については、今後、関東北西縁断層帯調査の進捗を待って、さらに詳細な検討が必要であると思われる。

表5−3−1 平井断層の変位量と最終活動時期