(1)方法

本調査では、断層の活動年代、変位量、地層の堆積環境等を把握するために、トレンチのり面及びボーリングコアより分析用の試料として採取し、14C年代測定と、火山灰分析を行った。

14C年代測定にはβ−線係数測定、加速器質量分析測定と2種類ある。いずれの方法も生物遺体等の内部の14C/12C比を求めて年代値を推定する方法である。生きている生物(植物)は大気や海水中の炭酸ガス・炭素イオンの14C濃度と等しい、ほぼ一定の値を示す。しかし、死ぬと一定に保つ働きはなくなる。その結果、放射性炭素である14Cは、時間がたつにつれて14Cから12Cへの壊変がすすむ。そのため、生物遺体中の14Cと12Cの比を求めることによって、生物が死んでからの時間を推定することが可能となる。β−線係数測定は、この比を求めるために14Cが放出するβ−線をカウントすることで、14Cを定量するものである。一方、加速器質量分析測定は14Cと12Cのわずかに重さが違うことを利用して、これら2つの元素を分離し、定量を行うものである。

放射年代測定は他にも様々なものが利用されている。14Cの測定レンジが0〜5万年程度と、比較的新しい部分を対象としているため、活断層調査では、断層の最終活動年代や、地層が断層によって、いつ変形させられたのかを調べるのに用いられる。また、その分析に用いる試料は生物遺体(植物片、材)や有機質土であり、変形している部分から直接採取する。

テフラ分析の目的はテフラ同定により絶対年代を決定することである。テフラの同定には通常、層序学的方法と岩石記載学的方法が必要である。前者は野外調査による記載、後者は室内分析のことである。本調査では層序学的方法として、ボーリング及びオーガーコアによる層位、層相の記載を行い、岩石記載学的方法として岩石レベルではテフラの組織の観察、鉱物レベルでは形態の観察及び屈折率の測定を行った。

具体的には、ボーリング及びオーガーコアからテフラと非テフラを識別し、層序学的方法として柱状図の作成により、テフラの層序の確立、層厚、粒度、色調、降下ユニット、風化度、発泡度の観察を行った。また、岩石記載学的方法としては、ボーリング及びオーガーコアからテフラのサンプリングを行い、サンプリングした分析テフラの洗浄後、岩石レベルでは発泡様式、重鉱物組成の相対量比の記載を行い、鉱物レベルでは火山ガラスの形、色の記載、屈折率に関しては火山ガラス、輝石、角閃石の測定を行った。また、鉱物レベルのテフラの同定に関して、火山ガラスの形はバブルウオール型、軽石型に分類した。

最終的に、層序学的結果と岩石記載学的結果を組み合わせることにより、テフラの類似種を減少させ特定テフラ分析の精度を高めた。