(1)方法

以下のような方法に基づいてトレンチ掘削を行った。

@ 掘削の手順

調査用地の境界を定め、トレンチ掘削用地及び掘削残土置き場等の作業用地を設定する。そのとき、用地境界等が不明瞭な場合は、杭うちを行い、境界を定めた。

指定された掘削用地に重機を用いて所定の規模、深さのトレンチを掘削する。

トレンチの掘削勾配は、土質によって安全な角度とするように計画し、ほぼ一様な傾斜で(約45度)掘削を行った。

トレンチ中の湧水は水中ポンプ等を用いて排水する。

掘削したトレンチ壁面は、地層の詳細な観察ができるように、スコップ、ねじりがま等を用い、人力で平滑に成形する。

成形したトレンチのり面には、観察及びスケッチの座標として、1mメッシュのグリッドを設ける。グリッドは以下の手順で設置する。

(1) トレンチのり面の上端に杭と板で柵を作る。

(2) 板の水平距離1m毎にくぎを打つ。

(3) その釘の位置から垂線を落とし、水糸を張る。また、のり面下端にて大型釘で固定する。各水糸の間隔は1mとなるように、上下で間隔を調整する。又、基準点からの距離を1m毎に柵に記入する。

(4) 垂直の線が張り終わった後、レベルを用いて基準となる水平線を水糸で張る。このとき、必要に応じて水平線に標高を示す。

A トレンチのり面の観察、スケッチ及び写真撮影

以下の点に注意して、のり面の観察及びスケッチ・写真撮影を行う

(1) のり面を詳細に観察し、縮尺1/20でスケッチを行う。

(2) スケッチは、所定の縮尺で表現できる最小限度の単層まで区分し、単層毎の層相、変形構造、堆積構造、断層・亀裂、動植物遺体、液状化跡、考古物遺跡等について表現し、又観察結果をスケッチの上に書き込みとして表現する。

(3) 単層間の不整合、単層と断層との切られた、覆ったの関係、層準による変形の違いなどを総合的に判断して、断層活動が生じた層準を認定し、その層準をスケッチに表現する。

(4) 1/20スケッチを各のり面単位でまとめ、地層を幾分模式化し、断層活動層準や年代等を書き入れた縮尺1/50の解釈図を作成する。

(5) スケッチが完了した後、すべてののり面に対し、カラー写真撮影を行う。写真はできるだけ細部まで明瞭に写るよう調節し、かつ、のり面に対してゆがみが少なくなるように注意をする。又張り合わせて1つののり面全景がわかるように撮影位置・角度等を調節する。断層近傍の変形構造や、断層活動時期が特定できるような重要な部分については、近接撮影を行い、のり面全景写真と部分写真の両方を作成する。

B 試料採取

以下の各種試料採取を行った。採取した試料はチャック付きのポリ袋に入れ、トレンチ名、採取位置、採取番号等を明記する。又、スケッチ上にも採取位置と試料番号を明記する。この内、後に指定する試料に対して年代測定を行った。ただし、考古遺物に関しては教育委員会の指示を受けるものとした。

(1) 炭素同位体年代測定用試料(木片、腐植土等)

(2) テフラ試料:発見されたものすべての層準

(3) 考古遺物:発見されたものすべて

C トレンチ平面図の作成

(1) 水準測量によりトレンチを含めた平面図を作成する。トレンチ周囲5m以内の地形はこれも合わせて表示し、図中には、目印となるものを示しておく。縮尺は1/200程度とする。

D 現地調査本部及び看板の設置

原則として、トレンチ調査用地内には現地調査本部を設ける。調査本部には床面積2×4m程度のユニットハウスを用い、タンク式の簡易トイレを設置する。又、各調査地点の出入り口付近には、調査名、調査機関、発注者名、請負機関、現場責任者名、連絡先等を記入した看板を設置する。ただし、保美地区は簡易トレンチであったため、ユニットハウス、トイレは設置できなかった。

E 調査用地の復旧

トレンチの埋め戻しは、掘削残土を転圧して、十分に突き固めながら慎重に行う。埋め戻しの土が不足している場合には新たに用意し、補充する。埋め戻し終了後は、土地所有者から復旧完了の承認を得る。