(3)技術用語の説明

粘土:堆積物を構成する5ミクロン以下の粒子(5/1000o)。一般的には岩石などが風化して作られたものが、水流によって運ばれて、流れの静かな部分に堆積したもの。

シルト:砂と粘土の中間の粒度の堆積物。一般には1/256(0.039)o〜1/16(0.625)oのものを指す。やや粘土よりも粗い堆積物である。

炭質物:植物遺体を総称して炭質物としている。大きいものは材や、木片で、小さいものとしては、腐植した葉や根などである。破片として認められないものは、有機質という表現を用いている。

火山灰:直径2o以下の破片からなる火山の噴火によって放出されたもので、固結していないものを指す。

テフラ:火山の爆発的噴火で、地表に噴出された破片状の物質の総称。火山灰、軽石、スコリア等が含まれる。以下に、本調査で関係のあるテフラを古い順に示す。

ATテフラ層:九州の姶良カルデラを噴出源とする軽石、火山灰を指す。本調査地では細粒なガラス質火山灰。北海道を除いた日本各地で産出し、最終氷期の広域指標層として非常に重要である。噴出年代は2.5万年程度である。

As−BPテフラ層:数回の噴火によって構成され、軽石を主体とする。1.7〜2.1万年前の浅間火山の噴出物である。以下BPとする。

As−YPテフラ層:軽石を主体とし、発泡がよい。1.3〜1.4万年前の浅間火山の噴出物である。以下YPとする。

As−C テフラ層:軽石を主体とし、発泡がよい。4世紀中頃の浅間火山の噴出物である。

As−B テフラ層:岩屑を主体とし、軽石は少ない。1108年の浅間火山の噴出物である。

As−A テフラ層:軽石を主体とし、発泡がよい。1783年(天明3年)の浅間火山の噴出物である。

第四紀層:第四紀とは、地質時代最後の紀で、更新世と完新世の2つに区分される。年代としては、約180万年以降を指す。この時代に形成された(180万年前〜現在まで)堆積物や火山噴出物などを“第四紀層”と呼ぶ。

第三紀層:第三紀とは、地質時代最新の新生代(“紀”よりも大きな区分)のうちの第四紀よりも前の時代である。第三紀層は、さらに5つに区分され、前者3つを古第三紀、後ろ2つを新第三紀という。本調査地では、基盤としている部分は、新第三紀層が主体である。

段丘:川・海・湖などに隣接していて、平坦面と急崖が階段状に分布する地形。平坦面を段丘面といい、急崖を段丘崖と呼ぶ。段丘面はかつての河床・浅海底・湖底にあたり、海退、海進、地盤の隆起等の堆積・浸食環境の変化に伴い、離水し形成された平坦部を指す。今回の調査地では、河川により形成された段丘が発達し、形成年代より大きく3つに区分される。

AMS:加速器質量分析法(accelerator mass spectrometry)。加速器と質量分析計を組み合わせた測定機器を利用した年代測定法。14C年代測定は、生物遺体等の内部の14C/12C比を求めて年代値を推定する方法である。生きている生物(植物)は大気や海水中の炭酸ガス・炭素イオンの14C濃度と等しい、ほぼ一定の値を示す。しかし、死ぬと一定に保つ働きはなくなる。その結果、放射性炭素である14Cは、時間がたつにつれて14Cから12Cへの壊変がすすむ。そのため、生物遺体中の14Cと12Cの比を求めることによって、生物が死んでからの時間を推定することが可能となる。加速器質量分析測定は14Cと12Cのわずかに重さが違うことを利用して、これら2つの元素を分離し、定量を行うものである。通常の年代測定法と比較して(液体シンチレーションカウンターによるβ−線計数法)わずかな試料での分析が可能である。