1−1 調査の流れ

(1) 平成8年度調査の流れ

神川・平井両断層は既存研究にて指摘されているように、活動度が低く、8年度調査では、1カ所(矢場地区)を除き明瞭な地層の変位は認められなかった。

神川断層では、矢場地区での高密度電気探査、浅層反射法探査、ボーリング調査などの諸調査により、表層に分布する鍵層(火山灰層のATテフラ層、BPテフラ層、YPテフラ層)に変位または層厚の変化が認められ、調査範囲の限られた区間で断層による地層の変形が生じている可能性が明らかになった。

他の調査地区では明瞭な変位は認められなかった。

平井断層では、8年度調査地区において、明瞭な地層の変位は認められなかった。しかし、複数のテフラ層が確認されたところでは(保美地区)、イベントを確認できる可能性があると考えた。

以上のような結果から、8年度調査では、神川断層の矢場A地区及びその近傍で断層の延長が予想される矢場B地区、また、平井断層では保美地区がトレンチ調査の候補としてあげられた。

(2) 平成9年度調査の流れ

平成9年度調査でトレンチ調査を行うにあたり、補足ボーリングを行った。その理由を以下に示す。

・両断層とも活動度が低く、そのため変位量が少なく、断層の位置をつかむのが困難であること。

・段丘堆積物が発達しており、テフラ層を残すような細粒堆積物の堆積が少なく、そのため時間指標面となるテフラ層を捕まえるのが困難であること。

少ないデータを少しでも集めてトレンチ調査に結びつける必要があること。

以上をふまえて平成9年度は、トレンチサイトとして有力な矢場A,B(神川断層)及び保美(平井断層)の計3地区について、調査計画を立案した。9年度調査は、以下のフローによって、ボーリング調査、トレンチ調査の順に行った。