(2)新第三系

山地北東方向、山麓の丘陵地帯には、三波川帯の結晶片岩に接して堆積岩が広く分布している。これは新第三紀中新世の富岡層群である。富岡層群は下位から順に牛伏層、小幡層、井戸沢層、福島層、吉井層、板鼻層によって構成される。そのうち本調査地域には小幡層を除いて分布する。下位の三波川結晶片岩とは断層で接しているが、その走向と上位の富岡層群の走向は比較的調和的である。以下に下位から順に説明する。

・牛伏層(U)

模式地は吉井町南方の牛伏山及び城山であり、この地域の新第三系の最下部の地層である。下位の三波川結晶片岩とは、断層関係で接するとされるが、今回はその境界を直接確認することはできなかった。調査地域内では鮎川貯水池西側の丘陵や金井集落付近の鮎川左岸、山地などにその露頭が見られる。また、層厚は調査地域西側で最も厚く、約350m程度であるが、東側へ次第に減じ、保美集落付近では尖滅すると考えられる。岩相は細粒砂岩〜中粒砂岩を主体とし、一部には10cm程度の礫を含む部分もある。また、炭質物が葉理構造を示す部分もある。基質は全体的に茶褐色である。長石、石英などの数ミリ程度の結晶が角礫として多く含まれており、石英、長石に富むアルコース質である。固結度は一般的に高いことが多いが、一部低い部分も見られる。

・ 井戸沢層(Id)

模式地は富岡市の井戸沢地区である。今回の調査地域内では吉井町多比良地区の土合川河床に露頭が見られる。下位の牛伏層とは整合関係であるとされる。今回の調査ではシルト岩相の出現をもって井戸沢層とする。岩相はシルト岩、泥岩と細粒砂岩との互層になっており、細粒凝灰岩を挟在する。一般的に30゜〜50゜程度の傾斜を持ち、この地域全体の傾向と調和的である。全体的に固結度は高い。

・ 福島層(H)

下位の井戸沢層とは整合に重なるとされる。本層は下部の砂岩泥岩互層と上部の細粒砂岩の薄層を挟む泥岩部で構成される。今回の調査では凝灰岩層の出現をもって福島層としている。全体的に固結度は高い。調査地域内では吉井町土合川に典型的に露頭が見られ、ほか鮎川湖周辺にも分布する。

・ 吉井層(Y)

下位の福島層とは不整合関係で接するとされる。模式地は吉井町付近である。調査地域内では、竹沼貯水池周辺から三名湖貯水池を結んだ線より北方側から庚申山南部にかけて分布する。典型的な露頭は三名湖貯水池周囲でみられる。岩相の主体は砂岩と泥岩の互層であり、下部層は砂質泥岩及びシルト岩と、細粒〜中粒砂岩の互層を主体とし、ときに白色の酸性凝灰岩を挟む。上部層は細粒〜粗粒砂岩及び塊状のシルト岩の互層を主体とし、凝灰岩を挟在する。庚申山南町付近の丘陵地の畑では、直径1−3cm程度の軽石を多く含む中粒砂岩が分布する。

・ 板鼻層(It)

下位の吉井層とは整合に重なる。安中市の板鼻付近の丘陵が模式地とされている。走向は、庚申山付近では西北西−東南東であるが、緑埜付近より西方では露出が悪く、はっきりしないものの、下位の吉井層と整合的であると考えられるため、北西−南東方向になるようである。傾斜は北東方向に同斜構造を示す。

調査地域内では庚申山に典型的に露頭が分布する。岩相は礫岩、砂岩を主体とし、ときにシルト岩、泥岩を挟む。シルト岩、泥岩は全体的に凝灰質である。また、砂岩には斜交葉理が発達する。礫は円礫が大部分で、直径5〜20cmのものが多く、平均礫径は7〜8cmである。礫種はチャート、砂岩、結晶片岩を主体とするが、結晶片岩は風化が著しい。基質は、確認できる限りでは、内側まで酸化し、茶褐色を呈す。また固結度も高い。