2−1 地形調査

目的

活断層とは最近の地質時代に繰り返し活動し、将来も活動することが推定される断層のことで,一般的には地質年代の区切りである第四紀、つまり約200万年前以降、現在までの間に動いたと見なされる断層を活断層という。断層は一つの面を境にして岩体が相対的にずれている場合に、その現象を断層と言う。断層は縦ずれ、横ずれ断層に分類され、さらには縦ずれ断層は正断層と逆断層、横ずれ断層は右ずれ断層と左ずれ断層に分類される。いずれも活断層は一般に、地形をくいちがわせ、地形的特徴のくいちがいとなって地表面に現れている。くいちがいの痕跡は、現在に近い時代に活動したものほど明瞭である。古い時期にこのようなくいちがいを起こしても、その後の活動がなければ、それらは浸食や堆積のために次第に不明瞭になり、ついにはその痕跡が消されてしまう。そのため、活断層でない断層は地表面の特徴が消されてしまう。したがって、活断層の認定には活断層に伴う変位地形を見出すことが必要である。その意味で活断層調査には地形の判読および調査が不可欠である。

方法

活断層に伴う変位地形を見出すために、空中写真判読及び野外調査を行った。空中写真判読は、変位地形を見出すためにもっとも重要な手段である。つまり、変位地形は活断層に伴う、地殻変形の地表への総合的な現れなので、空中写真を用いた調査は、限られた地点に散在する地層や断層の露頭よりも、より面的に広く観察できるという利点を持っており、活断層調査に重要な意味を持つ。現在、ふつうに用いられている空中写真の縮尺は5千分の1、2万分の1、4万分の1である。本調査では、平井・神川断層のより詳細な調査をすることが目的のため、より大縮尺の5千分の1及び2万分の1の空中写真を用いた。また、近年人工的に地形改変が進み、細かな変形地形が判りにくくなっているため、昭和30年代の白黒写真(2万分の1)を用い、併せて、昭和60年代のカラー写真(5千分の1)を利用した。

空中写真により変位地形を見出すために、地形分類図を作成し、リニアメントを抽出した。リニアメントは線状に続く谷地形や崖、異なる種類の地形の境界など地形的に続く線状構造である。リニアメントが活断層と判定するためにはリニアメントの両側で同時代にできた一続きの地形面がその線を境に食い違っていることを確かめられなければならない。断層運動ではリニアメントに沿って断層変位地形つまり断層崖、低断層崖、地溝、断層池、地塁、ふくらみ、横ずれ尾根、横ずれ谷、シャッターリッジ等が形成されるため、これらが認められるかどうかによって活断層の認定を行った。地形分類図は、地形の性状やその分布状態を示した詳細な地図で、本調査では山地、丘陵、段丘、崖錐、自然堤防、沖積に分類した。地形分類図の作成により、活断層に伴うリニアメントがどのような地形面に分布し、同時代にできた一続きの地形面がその線を境に食い違っていることを確かめることが可能である。

 野外調査では地層や地形の変位の累積の様子から活断層を認定した。さらに、断層変位に伴う、段丘堆積物の傾斜にも注目した。