(6)考察

本調査における地形調査では、空中写真による地形分類図の作成、現地踏査によりリニアメントを抽出し、その過程で断層の分布、断層の性格を明らかにした。

調査の結果リニアメントが認められたのは矢場地区、庚申山南縁、保美地区、鮎川湖付近、西平井地区、多比良地区である。このうち、段丘面上にリニアメントが見られたのは矢場地区、保美地区、多比良地区、西平井地区、丘陵部にリニアメントが見られたのは保美地区、鮎川湖周辺部、地形の境界部とリニアメントが一致しているのは庚申山南縁である。また、最もリニアメントがはっきりしているのは保美地区、シャッターリッジ、断層凹地等、断層に伴う特有な地形が見られるのは西平井地区、多比良北部、リニアメント付近に広い溝が発達しているのは保美地区、西平井地区、やや不明瞭な低位断層崖が発達しているのは矢場地区、多比良地区である。

地形調査により明らかになった点をまとめると以下のようになる。

1.調査地全般的に変位量が少なく、リニアメント自体が不明瞭である。

2.調査地全般的に縦ずれ、横ずれあるいは正、逆断層か断層の性格が不明瞭である。

3.新しい段丘(V面)を切るリニアメントが欠如する場所が多い(三本木地区、矢場地区)。

4.丘陵部には比較的明瞭なリニアメントが見られる(保美地区等)。

5.リニアメントが現在の河川等と一致しているためリニアメントが断層に伴うものか、河川の浸食によるものか不明瞭な場所がある(矢場地区、保美地区、西平井地区、多比良地区)。 

地形調査からは、新しい段丘(V面)にリニアメントが発達する本郷地区、本調査地で最もリニアメントがはっきりする保美地区、断層凹地が発達し、新しい地層が多く堆積していることが予想される西平井地区がトレンチの適地であると判断できる。

本調査は群馬県内に限られて行われた。調査地内ではリニアメントが明確でないということは述べたとおりだが、平井、神川断層に伴うリニアメントは共に、神流川を挟んで埼玉県側にも伸延している。しかも埼玉県側のリニアメントははっきりしている。従って、平井、神川両断層系の群馬県部は両断層の末端部にあたる可能性が極めて大きい。