(2)大草地点

屏風山断層大草地点の地形面は土石流堆積面(F3[1]面,F3[2]面,F3[3]面,F4面,F5面,F6面,F7面)と崖錐斜面(dt)および地すべり・崩壊地形(Ls)に区分される。

基盤地質は美濃帯堆積岩類と領家花崗岩類および瀬戸層群からなり,土石流堆積層と崖錐堆積層の第四系がこれらを覆って分布する。土石流堆積層は地形面に対応した堆積物として取り扱い区分したが,fd0層は対応する地形面は認められない。

屏風山断層はF−1断層とF−2断層の2条の断層からなる。F−1断層は花崗岩と瀬戸層群の断層で,fd0層に覆われる。F−2断層は花崗岩とfd0層の断層で,断層露頭解釈から,F−2断層はfd0層堆積中に活動を終了した可能性が高い。

写真3−2−2−20 屏風山断層大草地点全景

(a)地形面区分

大草地点は屏風山断層の南西部に位置する。屏風山断層による直線状急崖地形によって山地と丘陵地に分けられる。調査範囲の約500m東方には,標高794mの屏風山が南東に広がる土岐面からぬきんでた山地としてそびえる。屏風山断層の北西の丘陵地には河床からの比高が10〜30mの土石流堆積面が分布する。山地や丘陵地などの地形面は大局的には西傾斜し,河川は西に流下する。(写真3−2−2−20

地形面区分は空中写真判読結果を基に,詳細な地形面分布や現河床からの比高および地形面構成層の性状などを現地で確認して作成した。空中写真は国土地理院撮影の縮尺1/8,000のもの(C CB−76−16 C10−7〜10,C CB−76−16 C9−8〜11)を用いた。一部人工改変により原地形が残っていない部分については空中写真判読結果を示した。

大草地点に分布する地形面は土石流堆積面と崖錐斜面および地すべり・崩壊地形に大別できる。土石流堆積面は上位よりF3面,F4面,F5面,F6面およびF7面に区分される。F3面は,F3(1)面,F3(2)面およびF3(3)面に細分される。(表3−2−2−3図3−2−2−8

表3−2−2−3 地形面区分表(屏風山断層大草地点)

以下に大草地点における地形面の分布と性状について述べる。

@F3(1)面

F3(1)面は調査範囲の南部と中部および北部の山地と丘陵地の境界付近にわずかに分布する。F3(2)面よりやや高所に分布することから区分した。地形面の平坦性はほぼ保たれているが,開析され地形面の縁辺部はやや丸みを帯びる。現河床からの比高は30〜40mである。

AF3(2)面

F3(2)面は調査範囲に広く分布する。調査地北部には幅50〜100mで長さ約650mの面と幅約100mで長さ約700mの面が分布し,調査地中央部には幅100〜200mで長さ約700mの面が分布し,調査地南部には幅約100mで長さ350m以上の面が分布する。そのほかに調査地中央部に幅約15mで長さ約80mの小規模な面が分布する。地形面の平坦性はほぼ保たれているが,やや開析され地形面上に小規模な沢地形がみられたり浸食による緩やかな溝状地形が見られるほか,地形面の縁辺部はやや丸みを帯びる。現河床からの比高は10〜30mである。

BF3(3)面

F3(3)面は調査地北部に幅約50mで長さ約450mの規模で分布する。F3(2)面よりやや低く,F3(2)面の亜段とみなせる。地形面の平坦性はほぼ保たれている。現河床からの比高は10〜20mである。

CF4面

F4面は調査地に発達する水系のうち規模の大きな河川に沿って分布する。このうち調査地中央部に分布する本面は幅50〜130mで長さ約730mと最も規模が大きい。調査地南部では,ほぼF−2断層に沿って南南西傾斜で幅30〜50mの本面が分布し,その後の流路変更により風隙が形成されている。一般に地形面の平坦性は保たれている。現河床からの比高は5〜10mで,前述の風隙部分は現河床からの比高は20m程度である。

DF5面

F5面は小河川に沿って調査地のほぼ全域に分布する。一般に幅5〜20mと小規模なものが多い。地形面の平坦性は保たれている。現河床からの比高は3〜6mである。

EF6面

F6面は調査地のほぼ全域において,河川沿いに幅5〜20mの平坦面を形成して分布する。地形面の平坦性は保たれている。現河床からの比高は1〜3mである。

FF7面

F7面は現河床面で,調査地のほぼ全域の各沢筋に分布する。

G崖錐斜面

崖錐斜面は急斜面の下方や沢に沿ってほぼ調査地の全域に分布する。

H地すべり・崩壊地形および地すべり土塊

調査地には地すべり・崩壊地形はほとんど分布しない。調査地北部に幅数mで長さ数mのスランプタイプの小規模な崩壊地が1箇所分布するのみである。

(b)地質層序

大草地点の地質は下位からジュラ紀〜白亜紀前期の美濃帯堆積岩類と白亜紀後期の領家花崗岩類と新第三紀鮮新世の瀬戸層群からなり,これらの地層・岩体を覆って第四紀の土石流堆積層および崖錐堆積層が分布する(図3−2−2−9表3−4−2−4)。瀬戸層群は美濃帯堆積岩類と領家花崗岩類を不整合で覆い,調査範囲では屏風山断層の北西に分布し屏風山断層によって花崗岩と断層接触する。土石流堆積層は下位から土石流堆積層0,土石流堆積層V(1),土石流堆積層V(2),土石流堆積層V(3),土石流堆積層W,土石流堆積層X,土石流堆積層Yおよび土石流堆積層Zに区分した。土石流堆積層0に対応する地形面は認められない。土石流堆積層V〜ZはそれぞれF3面〜F7面の地形面に対応した堆積物として取り扱う。第四紀層のうち,fdV層とfdW層については層相の記載と地形面との関係を観察・記載し,第四紀層露頭観察カードにとりまとめ巻末資料とした。

以下に当地点に分布する各地層や岩体の分布や岩相・層相について述べる。

@美濃帯堆積岩類(Ms)

美濃帯堆積岩類は屏風山断層の南東では花崗岩中にゼノリスとして分布する。屏風山断層の北西では調査地北部にわずかに分布し,土岐砂礫層に不整合で覆われる。岩相は砂岩やチャートからなる。(写真3−2−2−21

表3−4−2−4 屏風山断層大草地点地質層序表

写真3−2−2−21 美濃帯堆積岩(砂岩)の岩相   

写真3−2−2−22 花崗岩の岩相

A領家花崗岩類(Gr)

領家花崗岩類は屏風山断層の南東に分布する。岩相は粗粒な黒雲母花崗岩である。(写真3−2−2−22

B瀬戸層群土岐砂礫層(砂礫層)(Tg)

瀬戸層群土岐砂礫層(砂礫層)は屏風山断層の北西側にのみ分布し,南部で厚く北部に向かって薄層化し,消滅する。美濃帯堆積岩類を覆い,土岐砂礫層(砂・粘土層)や土石流堆積層に覆われる。層相は礫径2〜5cmの美濃帯構成岩の亜円礫を含む砂礫層で,礫径5〜10cmの濃飛流紋岩礫を含むこともある。マトリックスは砂およびシルトからなる。(写真3−2−2−23)層厚は0〜20m以上である。

写真3−2−2−23 土岐砂礫層(砂礫層)の層相.濃飛流紋岩礫が多い.

C瀬戸層群土岐砂礫層(砂・粘土層)(Ts)

瀬戸層群土岐砂礫層(砂・粘土層)は屏風山断層の北西側にのみ分布し,北部で厚く南部に向かって薄層化し,消滅する。美濃帯構成岩類や土岐砂礫層(砂礫層)を覆い,土石流堆積層に覆われる。層相は粘土やシルトおよび砂からなる。粘土およびシルトは白〜灰白色を呈し,亜炭層を挟むことがある(写真3−2−2−24)。砂は細粒〜粗粒砂で,粗粒砂には花崗岩の細礫を含むことがあり明瞭なラミナがみられる(写真3−2−2−25)。層厚は30m以上である。

写真3−2−2−24 土岐砂礫層中の粘土層    

写真3−2−2−25 土岐砂礫層中の砂層

D土石流堆積層0(fd0)

土石流堆積層0は屏風山断層の北西に広く分布する。土岐砂礫層を不整合で覆い,一部美濃帯構成岩を不整合で覆う。土石流堆積層V〜Zに不整合で覆われる。本層に対応する地形面は認められない。本層の基底面は現地形の傾斜にほぼ調和的に緩く西方に傾斜する。層相は礫径3〜20cmの花崗岩と美濃帯堆積岩の角礫を含む砂礫層で,マトリックスは花崗岩起源の灰白色を呈する淘汰の悪い砂からなる。花崗岩礫はクサリ礫化しており,美濃帯堆積岩礫は新鮮なものとややクサリ礫化したものがある。締まった地層である(写真3−2−2−26写真3−2−2−27)。層厚は30m以上である。

写真3−2−2−26  fd0層の層相クサリ礫を含む締まりのよい砂礫層からなる.

写真3−2−2−27 fd0層の層相

E土石流堆積層V(1)(fdV[1])

土石流堆積層V(1)はF3(1)面の構成層として調査範囲の南部と中部および北部の山地と丘陵地の境界付近にわずかに分布する。本層の露頭は認められない。層厚は5〜10mと推定される。

F土石流堆積層V(2)(fdV[2])

土石流堆積層V(2)はF3(2)面の構成層として調査範囲に広く分布する。層相は礫径2〜20cmの花崗岩と美濃帯堆積岩類の角礫を含む角礫層で,マトリックスは明褐色や赤褐色のシルトや砂質シルトからなる。礫は花崗岩礫が優勢である。花崗岩礫はやや軟質であり,美濃帯堆積岩礫は硬質であることが多い。やや締まった地層である(写真3−2−2−28)。本層の層厚は1〜7mである。(図3−2−2−10図3−2−2−11

調査地北部のBOKC9露頭で広域テフラであるDNP(大山生竹)が混在する層準が認められ,fdV(2)層の形成時期は8.0万年以前である可能性がある。(3−2−2[2].火山灰分析結果参照)

G土石流堆積層V(3)(fdV[3])

土石流堆積層V(3)はF3(3)面の構成層として調査地北部に幅約50mで長さ約450mの規模で現河床からの比高10〜20mの平坦面を形成して分布する。本層は1箇所の露頭(BOKC10)で観察されたのみである。BOKC10露頭での本層は上部相と下部相に区分される。上部相は礫径1〜5cmの美濃帯堆積岩と花崗岩の角礫を主体とする。礫は美濃帯堆積岩礫が優勢であり,花崗岩礫はややクサリ礫化している。マトリックスは赤褐色シルトからなり,崖錐的な層相である(写真3−2−2−29)。下部層は礫径10〜30cmの美濃帯堆積岩と花崗岩の角礫を主体とする。礫は美濃帯堆積岩礫が優勢で,最大径は70cmである。マトリックスは暗褐色を呈するシルト質砂からなり,やや締まった地層である(写真3−2−2−29)。本層の層厚は2〜8mである。(図3−2−2−10図3−2−2−11

写真3−2−2−28

fdV(2)層

fdV(2)層

fd0層

写真3−2−2−29 fdV(3)層の層相

H土石流堆積層W(fdW)

土石流堆積層XはF5面の構成層として調査地に発達する水系のうち規模の大きな河川に沿って分布する。層相は礫の平均径5〜50cmの花崗岩や美濃帯堆積岩の角礫を主体とし,マトリックスは褐色や淡褐色を呈する粗粒砂と,褐色や暗褐色を呈するシルト質砂〜砂質シルトからなる。礫は花崗岩が優勢で特に50cmを越える巨礫はすべて花崗岩である。ゆるい地層である(写真3−2−2−30)。層厚は2〜10mと推定される。(図3−2−2−10図3−2−2−12

写真3−2−2−30

fdW層の層相

I土石流堆積層X(fdX)

土石流堆積層XはF5面の構成層として調査地のほぼ全域において河川に沿って分布する。層相は礫径5〜20cmの花崗岩の角礫からなりわずかに美濃帯堆積岩礫を含む。礫は一般に硬質である。マトリックスは褐色の砂からなり,非常にゆるい地層である。層厚は2〜5mと推定される。

J土石流堆積層Y(fdY)

土石流堆積層YはF6面の構成層として調査地のほぼ全域において河川に沿って分布する。層相は礫径5〜30cmの濃飛流紋岩角礫を主体とする砂礫からなる。マトリックスは粗粒砂からなる。調査地中央〜北部にかけての土岐砂礫層(砂・粘土層)の分布域では砂や粘土主体の層相もみられる。非常にゆるい地層である。本層の層厚は2〜5mと推定される。

K土石流堆積層Z(fdZ)

土石流堆積層ZはF7面の構成層で,調査地のほぼ全域の各沢筋に分布する。一般に礫径5〜50cmの花崗岩や美濃帯堆積岩の角礫を主体とするが,分布域の基盤岩の地質や供給源からの移動距離などにより層相は異なる(写真3−2−2−31)。本層の層厚は2〜5mと推定される。

L崖錐堆積層(dt)

崖錐堆積層は急斜面の下方や沢に沿ってほぼ調査地の全域に分布する。角礫や礫混じりシルトからなると推定される。本層の層厚は1〜10mと推定される。

写真3−2−2−31fdZ層の露出状況

現河床面

(C)断層露頭

大草地点では6露頭で7条の断層や破砕帯露頭がみられた(図3−2−2−13)。本調査では,地表踏査で確認された断層や破砕帯露頭について断層露頭観察カードを作成し巻末資料とした。7条の断層や破砕帯のうち,3条は花崗岩や美濃帯堆積岩中の断層や破砕帯で,2条は花崗岩と土岐砂礫層の断層で,1条は土岐砂礫層中の断層で,1条は花崗岩と土石流堆積層の断層である。ここではこれらの断層や破砕帯のうち,主要な断層(BY−7,BY−47,BY−48)について述べる。

@BY−7断層露頭

BY−7断層露頭はF−1断層の露頭(図3−2−2−13)で,花崗岩と土岐砂礫層の断層露頭である。有井(1958)により記載がある。本断層露頭では,花崗岩と土岐砂礫層の砂層が逆断層で接し,花崗岩の一部は土岐砂礫層の上に覆い被さるような産状を示す。断層面の走向傾斜はN49E53NEで,屏風山断層の全体の方向とはやや斜交し,有井(1958)により示されたN15E50Sともやや異なる。断層面には幅2〜3cmの淡緑色粘土を介在し,花崗岩中には幅数cmの緑色破砕部が多く発達する。(図3−2−2−14

ABY−47断層露頭

BY−47断層露頭はF−1断層の露頭(図3−2−2−13)で,花崗岩と土岐砂礫層の断層露頭である。花崗岩はマサ化した粗粒花崗岩で,花崗岩中には濃緑色粘土を伴った破砕帯が数条分布する。土岐砂礫層は砂礫や砂および粘土からなり,地層の走向傾斜はN1E65NWを示す。断層面は波曲し,走向傾斜はN31W62NEやN23E60NWやN16E73NWなどを示す。大局的には北東側隆起の逆断層とみなせる。断層面には幅約1cmの濃緑色粘土を介在する。(図3−2−2−15写真3−2−2−32写真3−2−2−33

BBY−48断層露頭

BY−48断層露頭はF−2断層の露頭(図3−2−2−13)で,花崗岩とfd0層が明瞭な低角度逆断層で接する(図3−2−2−16,写真3−2−2−34,写真3−2−2−35)。

(@)地質構成

fd0層は下位からA層〜I層に9区分される。B層はB−1層とB−2層に細分され,D層はD−1層,D−2層,D−3層およびD’層に,G層はG−1層,G−2層およびG−3層に,H層はH−1層,H−2層およびH−3層に,I層はI−1層およびI−2層に細分される。当露頭では地層の形成時期を示す試料は得られなかった。

以下に当露頭に出現する各層の層相など特徴を述べる。

A層

礫径2〜10cmの硬質な花崗岩の角礫を主体とする。マトリックスは明褐(7.5YR 6/8)〜明赤褐(5YR 5/6)を呈するシルト質砂からなる。層厚は20〜30cmである。花崗岩を覆う。

B−1層

径5mm以下の長石と石英の岩片を多く含む礫混じり砂質シルトからなる。オリーブ黄(5Y 6/3,5Y 6/4)を呈する。花崗岩起源の堆積物である。層厚は20cm程度である。

B−2層

径2〜10mmの長石と石英の岩片を多く含む礫混じりシルトからなる。明褐(7.5Y 5/6,7.5Y 5/8)および黄褐(10YR 5/6)を呈する。礫径10cm程度の軟質な花崗岩角礫(マサ起源)をわずかに含む。花崗岩起源の堆積物で,B−1層の風化帯に相当する。層厚は60〜80cmである。

C層

径2〜20mmの長石と石英の岩片を多く含む礫混じりシルトからなる。径10〜20cmの風化花崗岩や破砕質花崗岩の岩片を含む。マトリックスは明黄褐(10YR 6/6)シルトからなる。風化花崗岩や破砕質花崗岩の堆積物である。層厚は110〜130cmである。

D−1層

アルコース質な礫混じりシルト質砂からなる。長石と石英の岩片を多く含む。層厚1〜2cmのシルト層を挟むことがあるが,連続性は良くない。青灰(10BG 6/1)や明青灰(10BG 7/1)を呈する。破砕質花崗岩の堆積物である。層厚は7〜20cmである。

D−2層

長石と石英の岩片を多く含む礫混じりシルトからなる。灰オリーブ(7.5Y 5/2,7.5Y 5/3)を呈する。層厚は0〜20cmである。

D−3層

礫混じりシルト〜礫混じり砂質シルトからなる。径2〜10mmの長石や石英の岩片を多く含むほか,礫径1〜15cmの花崗岩岩片を少量含む。花崗岩岩片は一般に軟質である(風化花崗岩起源)。マトリックスは明黄褐(10YR 6/6,10YR 6/8)や燈(7.5YR 6/8)および明褐(7.5YR 5/8)を呈する。D−2層の風化帯に相当する。層厚は0〜120cmである。

D’層

礫混じり砂からなる。マトリックスはシルト混じり砂で,明黄褐(10YR 6/6)を呈する。風化花崗岩の崩壊物を多く含む風化花崗岩起源の堆積物である。

E層

礫径2〜3cmの花崗岩岩片を多く含む角礫層で,マトリックスは淡黄(7.5Y 8/3)や明緑灰(10GY 7/1)の砂およびシルト質砂からなる。花崗岩岩片はやや軟質である(風化花崗岩起源)。風化花崗岩起源の堆積物である。層厚は100cm以上である。

F層

層理の発達した極粗粒砂〜粗粒砂からなる。細粒砂〜シルトの薄層(d=1〜10cm)を挟む。極粗粒砂中には礫径2〜30cmの花崗岩岩片を含む。極粗粒砂および粗粒砂は黄(2.5Y 7/8)や明黄褐(2.5Y 7/6)を呈し,細粒砂およびシルトはオリーブ灰(10Y 6/2)や緑灰(10GY 6/1)を呈する。層理面の走向傾斜はN24W8Eを示す。層厚は60〜80cmである。

G−1層

径2〜10mmの長石や石英の岩片を多く含む礫混じり砂質シルトで,まれに径20mm程度の花崗岩岩片を含む。黄褐(10YR 7/8)や明黄褐(10YR 6/8)を呈する。風化花崗岩起源の堆積物である。層厚は0〜50cmである。

G−2層

径2〜10mmの長石や石英の岩片を多く含むほか,径20mm程度の花崗岩岩片を含む礫混じりシルトである。マトリックスは砂混じりシルトで燈(7.5YR 6/8)や明褐(7.5YR 5/8)を呈する。G−1層の風化帯に相当する。層厚は60〜70cmである。

G−3層

破砕質花崗岩起源の砂質シルトで,明青灰(5BG 7/1)や青灰(5BG 6/1)を呈する。

H−1層

破砕質花崗岩の岩片を含む細粒砂からなり,明青灰(10BG 7/1)やオリーブ灰(5GY 7/1)を呈する。破砕質花崗岩起源の堆積物である。層厚は5〜30cmである。

H−2層

砂質シルトからなり,明青灰(10BG 7/1)を呈する。破砕質花崗岩の崩壊性堆積物およびその再堆積物である。ほぼ水平に分布し,走向傾斜はN8W10Eを示す。層厚は5〜10cmである。

H−2’層

細粒砂および砂質シルトからなり,明青灰(10BG 7/1)やオリーブ灰(5GY 7/1)を呈する。破砕質花崗岩の崩壊物である。H−3層中に挟在する。層厚は5〜30cmである。

H−3層

径2〜20mmの長石と石英の岩片や,礫径20〜50mmの花崗岩の岩片を含む礫混じり砂。マトリックスはシルト混じり砂からなり,燈(7.5YR 6/6,7.5YR 6/8)を呈する。風化花崗岩やG層の崩壊性堆積物である。層厚は0〜25cmである。

I−1層

径2〜20mmの長石や石英の岩片や,径30〜50mmの花崗岩岩片を含む礫混じりシルトからなる。マトリックスは砂混じりシルトで,明褐(7.5YR 5/6,7.5YR 5/8)を呈する。G層とH層の風化帯に相当する。層厚は0〜90cmである。

I−2層

径1〜5mmの長石や石英の岩片や径10mm程度の花崗岩岩片をわずかに含むシルトで,明赤褐(5YR 5/8)や赤褐(5YR 4/8)を呈する。G層とH層の強風化帯に相当する。

なお,周辺のfd0層の分布標高は約480m位まではあるが,当露頭の分布標高は460m位であり,T層の上位層が分布する可能性が高い。

(A)地質構造

BY−48断層露頭では,花崗岩とfd0層が明瞭な低角度逆断層で接することを確認した。当露頭ではf1断層〜f4断層の4つの断層面を確認した。断層面は花崗岩とfd0層の境界ではほぼ1条の断層であるが,fd0層中では4条の断層面に分岐する。

f1断層はD層とG層およびH層を切断し,さらにH層とI−1層の境界部も切断する。I−1層中部より上位で断層面は不鮮明になる。断層延長部のI−1層とI−2層の境界部には,下位の地層境界で認められたようなセンスの変位は認められない。f1断層による断層面に沿った見かけの変位量はD層とG層およびH層ともに0.2〜0.3mである。

f2断層とf3断層はD層とG層を切断し,H層に覆われる。f2断層とf3断層によるD層とG層の断層面に沿った見かけの変位量は0.2〜0.3mである。

f4断層は花崗岩とD層を境する断層で,G層に覆われる。

断層面の走向傾斜はf1断層がN44E29SE,f2断層がN36E27SE,f4断層がN47E84SEである。f1断層〜f4断層が1条の断層として収束してる部分では,断層面の走向傾斜はN20E37SEおよびN38E40SEを示す。

BY−48断層露頭におけるfd0層堆積後の断層の見かけの鉛直総変位量は下盤側のA層基底面から上盤側のA層基底面の比高差で示される。断層上盤側にはA層に対応する地層が浸食により欠如しているため総変位量は不明であるが,fd0層の鉛直変位量は8.5m以上である。

(B)活動時期

イベントT(最新活動時期)

f1断層による変位が最新活動とみなされる。f1断層がH層とI層の境界部を切断するがf1断層はI−1層中で不明瞭になるが,断層延長部のI−1層とI−2層の境界部には,下位の地層境界で認められたようなセンスの変位は認められない。最新活動時期であると考えられるイベントTは風化帯としてのI−1層形成後でI−2層形成前である可能性がある。

イベントU

f2断層とf3断層がH層に覆われることから,f2断層とf3断層による断層変位はf1断層の活動(イベントT)以前であるとみなせる。イベントUはG−3層堆積後,H−1層堆積前である。

イベントV

f4断層がG層に覆われることから,f4断層による断層変位はf2断層とf3断層の活動(イベントU)以前であるとみなせる。イベントVはD’層堆積後,G−1層堆積前である。

断層の変位量からみてA層からD層堆積中に複数回の断層活動があったことは確実であるが,活動時期や単位変位量は特定できない。またE層やF層の堆積中,すなわちイベントUとイベントVの間にイベントが存在する可能性は否定できない。

風化帯(I−1層)基底部に変位が認められるが,この風化帯については前述したようにfd0層中の堆積過程で生じたと判断できる。また最新活動の単位変位量が20cm程度と小さいので,BY−48断層露頭ではfd0層堆積中もしくはfd0層堆積直後に活動を終了した可能性が高い。

(d)地質構造

大草地点での屏風山断層は,断層露頭の確認とその解釈および地質分布から,2条の断層として分布する。花崗岩と土岐砂礫層の断層をF−1断層とし,F−1断層の山地側に分布する花崗岩とfd0層との断層をF−2断層とした(写真3−2−2−17)。F−1断層は波曲するもののほぼ北北東−南南西方向の一続きの断層である。F−2断層はF−1断層の山地(東)側約50mにF−1断層から派生して分布する長さ約850mの断層である。

F−1断層とfd0層の関係を示す露頭はみられないが,BY−48断層露頭付近の露頭分布からfd0層はF−1断層を覆うと推定される。F−2断層はBY−48断層露頭でfd0層中に最新活動を示す変位が読みとれることから,F−2断層はfd0層堆積中もしくは堆積直後に活動を終了した可能性が高い。

地形面分布と断層の位置関係に着目すると,調査地に分布するすべての土石流堆積面がF−1断層とF−2断層を横断して分布し,これらの地形面に断層変位地形はみられない。このうち,F3(2)面は構成層中にDNPが含まれる可能性が高く,地形面の形成時期が8.0万年以前と推定される(3−2−2[2].火山灰分析結果参照)。なお調査地中央部に分布するF3(2)面のF−1断層通過付近では,地形図でみると等高線がやや密に描かれているが,現地ではf3(2)面に変位がないことを確認した。