(2)トレンチ調査地点の地形地質解析

(a)地層の形成年代と対比

手賀野断層中垣外地点における各トレンチ毎の地質記載を3−1−4でおこなったが,ここでは,14C年代測定,火山灰分析結果,層相の類似性および地形面との関係から,各トレンチの地層対比を行った。その結果,トレンチ実施位置においては,下位からT層〜X層に区分され,図3−1−6−8のように対比される。図3−1−6−9にトレンチ調査地点の地質横断面図を示す。

T層はT1トレンチでAT火山灰を挟む地層で,形成時期は20000年前〜25000年前と推定され,F4−2面に対応する地層である。T1トレンチのA層とT2トレンチのA層およびT3トレンチのA層がT層に相当する。

U層はT3トレンチのB層で,形成時期は不明である。F4−3面に対応する地層である。

V層はT2トレンチで液状化がみられたB層で,形成時期は7000年前〜8000年前と推定され,F4−4面に対応する地層である。

W層はT2トレンチのC層で,形成時期は2000年前〜5400年前と推定され,F4−5面に対応する地層である。

X層はT1トレンチのB層で,形成時期は1000年前〜2000年前と推定され,F4−5面に対応する地層である。

(b)断層の通過位置の検討

ここでは,空中写真図化結果から推定される手賀野断層の位置を検討した。

深沢地点の手賀野断層はH1面とM1面付近で沈降側(北西)に向かって凸な弧状の形態となり,低角逆断層であることを示す(図3−1−6−10)。地形的に認められる手賀野断層の分布から断層面の走向傾斜を推定した。H1面付近の変位地形の分布から,断層面の走向傾斜はN43E22SEおよびN39E17SEと推定され,M2面付近の変位地形の分布から,断層面の走向傾斜はN50E11SEと推定される。当地点の手賀野断層は北東−南西走向で,10〜20°南東傾斜であると考えられる。

上記の地形情報に基き推定した深沢地点における手賀野断層の走向傾斜から,トレンチ調査を実施した中垣外地点の手賀野断層の分布を検討した(図3−1−6−11)。地形的に明瞭な断層通過位置2点を固定点として,N50E11SE〜N50E20SEの断層面を想定すると平面的には図3−1−6−11に示す位置を通過し,断面的には図3−1−6−12および図3−1−6−13に示す位置に分布する。変位地形の分布から想定した断層位置(図3−1−6−11の赤ライン)と断層面の走向傾斜から想定した断層位置(図3−1−6−11の紫と青ライン)はやや前後する区間があるもののほぼ一致する。

トレンチ実施位置との関係をみると,T1トレンチでは,上記の断層傾斜角11°〜20°の範囲での想定位置を満たしており,T3トレンチでは傾斜角20°程度の想定位置を満たしている。しかし,この両トレンチでは,変位地形として認定した地表の段差直下に断層が認められなかったし,掘削範囲においても地層の連続性が確認された。従って,断層はT1およびT3トレンチの掘削範囲外を通っている可能性がある。図3−1−6−11に示すように断層傾斜角11°での想定位置は,T1トレンチの南端付近,T3トレンチで掘削範囲外であることから,断層の傾斜角度がさらに緩ければ,T1トレンチ掘削範囲よりさらに南側になる可能性も考えられる。ただし,低角度断層の場合,断層面の走向はかなり振れるため,この検討はあくまで参考程度の精度である.