(3)T3トレンチ

T3トレンチには主に砂礫層からなる土石流堆積層が分布し,下位からA層とB層に区分される。A層はB層に不整合で覆われる。A層はA1層〜A5層に5区分される。やや締まった地層で,大局的な傾向としては上方に向かって細粒となる。B層はB1層〜B3層に3区分される。緩い地層で,基底部には巨礫が多く上方に向かって細粒となる。T3トレンチでは断層は出現しなかった。(図3−1−4−8

(a)トレンチ法面の地質

@A1層:砂層

トレンチ終点付近の北東壁(TD=13〜16m)と南西壁(TD=11.5〜14m)の下部に分布する。A2層に覆われる。

本層は淘汰のよい細粒砂と中粒砂および粗粒砂からなり,礫径1〜5cmの亜円礫を含む礫混じり砂を挟む。明黄褐(2.5Y 6/6)を呈する。

AA2層:砂礫層(マトリックスシルト混じり粗粒砂〜極粗粒砂)

トレンチ中央〜終点の法面下部(北東壁のTD=8〜16.5m,南西壁の3〜16.5m)に分布する。A1層を覆い,A3層やA4層に覆われる。

本層は礫径5〜20cmの亜角礫を主体とする砂礫層で,最大径は100cmである。マトリックスはシルト混じり粗粒砂〜極粗粒砂からなり,にぶい黄(2.5Y 6/4,2.5Y 6/3)を呈する。

BA3層:砂礫層(マトリックス粗粒砂)

北東壁ではトレンチ起点〜終点(TD=4〜16m)にかけて層厚30cm程度でA2層とA4層に挟まれて分布する。南東壁ではトレンチ中央〜終点(TD=10.5〜17m)にかけて分布する。

本層は礫径5cm程度の亜角礫を主体とする砂礫層からなり,最大礫径は40cmである。マトリックスは粗粒砂が主体で,中粒砂および極粗粒砂を含む。にぶい黄(2/5Y 6/3)を呈する。

CA4層:礫混じり砂層(マトリックス細粒砂)

北東壁と南東壁(北東壁のTD=1.5〜16.5m,南西壁のTD=2〜17m)ともに層厚50cm程度でほぼ連続して分布する。A3層を覆い,A5層に覆われる。

本層は礫径3〜5cmの亜円礫および亜角礫を含む礫混じり砂からなり,砂礫層をレンズ状に挟む。マトリックスは細粒砂および砂質シルトで黄褐(10YR 5/6)を呈する。

DA5層:砂礫層(マトリックスシルト混じり粗粒砂)

北東壁と南東壁(北東壁のTD=1〜17m,南西壁のTD=1.5〜17m)ともに層厚30〜50cm程度でほぼ連続して分布する。

本層は礫径1〜5cmの亜角礫および角礫を含む砂礫からなる。マトリックスはシルト混じり粗粒砂やシルト質極粗粒砂および砂質シルトからなる。淘汰が悪く花崗岩岩片(細礫)を多く含む。にぶい黄(2.5Y 6/4)や明黄褐(10YR 6/6)を呈する。

EB1層:砂礫層(マトリックス粗粒砂〜細粒砂.巨礫多い)

トレンチ起点側〜中央部(北東壁のTD=0.5〜8.5m,南西壁のTD=1〜8.5m)にかけて層厚50cm程度のほぼ連続した地層として分布する。トレンチ中央部〜終点側(TD=8.5〜18m)では人工改変により地層が欠如する。A層を覆い,B2層に覆われる。

本層は亜角礫を主体とする砂礫からなる。礫は平均径10〜15cmで,最大径60cmである。下部には巨礫が多い。マトリックスは下部はシルト混じり粗粒砂で,上部はシルト混じり中粒砂および細粒砂で,上方に向かって細粒化する傾向がある。にぶい黄(2.5Y 6/4)を呈する。

FB2層:砂礫層(マトリックス極粗粒砂〜中粒砂)

トレンチ起点側〜中央部(北東壁のTD=0.5〜8.5m,南西壁のTD=0.5〜7.5m)にかけて層厚30cm程度のほぼ連続した地層として分布する。トレンチ中央部〜終点側(TD=8.5〜18m)では人工改変により地層が欠如する。B1層を覆い,B3層に覆われる。

本層は礫径2〜6cmの亜円礫および亜角礫からなる砂礫層である。最大径は30cmである。マトリックスは下部が粗粒砂および極粗粒砂で,上部が中粒および粗粒砂からなり,上方細粒化の傾向がある。にぶい黄(2.5Y 6/4)を呈する。

GB3層:砂層(シルト質細粒砂)

トレンチに出現する地層中の最上位に層厚50〜100cmのほぼ連続した地層として分布する(北東壁のTD=0〜8m,南西壁のTD=0〜8.5m)。

本層はシルト質細粒砂を主体とし,中粒砂および粗粒砂を含む。亜円礫をわずかに含む。堆積構造は認められない。にぶい黄(2.5Y 6/4)を呈する。上部はやや褐色化しにぶい黄褐(10YR 5/4)を呈する。

(b)地層の連続性と断層の有無

T3トレンチではA層とB層はともにほぼ水平に連続して分布する。北東壁のTD=8〜17mではA2層とA3層の境界がほぼ連続して追跡できる。TD=3〜17mではA3層とA4層の境界がほぼ連続して追跡できる。TD=1〜17mではA4層とA5層の境界がほぼ連続して追跡できる。TD=1〜9mではA5層とB1層の境界がほぼ連続して追跡できる。TD=1〜8mではB1層とB2層の境界がほぼ連続して追跡できる。TD=0〜8mではB2層とB3層の境界がほぼ連続して追跡できる。南西壁でも同様な関係が確認できる。

地表で変位地形として認識されたのは,TD=9m付近に存在する高さ約2.0mの崖であるが,上記のように地層の連続性が確認されることから,地表で変位地形として認識されたTD=9m付近の崖地形は,断層変位で形成されたものではないと判断される。