(1)T1トレンチ

T1トレンチでは法面全面の観察・記載を実施した。法面全面のスケッチは縮尺50分の1で,トレンチ南西壁のTD(基点側からの距離)=12〜18mでは火山灰層の分布と連続性を記載するため縮尺20分の1の詳細スケッチを実施した。以下にT1トレンチで出現した地層の分布と層相,詳細スケッチ結果について述べる。

(a)トレンチ法面の地質

T1トレンチには主に砂礫層からなる土石流堆積層が分布し,下位からA層およびB層に区分される。A層はB層に不整合で覆われる。A層は下位からA1層〜A6層に細区分され,B層は下位からB1層〜B7層に細区分される。A層下部(A1層,A2層,A3層)は砂礫主体で,A層上部(A4層,A5層,A6層)は砂およびシルト主体である。B層下部(B1層,B2層,B3層)は砂礫主体で,B層上部(B4層,B5層,B6層,B7層)は砂主体の層相である。A層中には姶良Tnテフラ(AT)が挟在し,B層は14C年代測定から2010±40yBPと1200±70yBPの年代値が得られた。T1トレンチでは断層は出現しなかった。(図3−1−4−2

@A1層:礫混じり砂層および砂礫層(マトリックス極粗粒砂)

トレンチ起点側(北東壁のTD=1〜6m,南西壁のTD=1〜6m,南東壁)と,トレンチ終点側(北東壁のTD=32〜34m,南西壁のTD=40〜44m)に分布する。トレンチに出現する地層の最下位に位置し,A2層やA3層に覆われる。

本層は亜角〜亜円礫を主体とする砂礫層が主体で,一部に礫混じり砂を伴う。礫は濃飛流紋岩礫を主体とし,花崗岩礫や美濃帯堆積岩礫を伴う。礫の平均径は5〜10cmで最大径は30cmである。マトリックスは淘汰の悪いシルト混じり極粗粒砂で,にぶい黄(2.5YR 6/4)を呈することが多い。

AA2層:シルト質礫層(シルト質礫および礫質シルト,一部シルト)

トレンチ起点側(北東壁のTD=7〜12m,南西壁の6〜12m)と,トレンチ中央部〜終点にかけて(北東壁のTD=27〜43m,南西壁のTD=21〜45m)に分布する。A3層,A4層およびA5層に覆われることが多い。トレンチ中央部付近ではA3層〜A6層が浸食により欠如しているためB層に不整合で覆われる。

本層は亜角礫および角礫を含むシルト質礫を主体する。礫含有率の違いによる層相の変化が顕著で,砂礫や礫質シルトや礫混じりシルトおよびシルトとして産することもある。礫は濃飛流紋岩礫を主体とし,花崗岩礫を伴いわずかに美濃帯堆積岩礫を含む。礫の平均径は5〜20cmで最大径は100cmである。TD=33〜38mに巨礫が多い。マトリックスは砂質シルトからなる。新鮮部では青灰(10BG 5/1)や緑灰(5G 6/1)を呈し,風化して黄褐(10YR 5/6,10YR 5/8)や明黄褐(10YR 6/8)を帯びる。礫の配列はランダムでマトリックス中には粒度の違いによる層理面は認められない。

BA3層:砂礫層(マトリックス粗粒〜中粒砂)

トレンチ起点側(北東壁のTD=1〜9m,南西壁のTD=1〜11m)と中央部(北東壁のTD=14〜28m,南西壁のTD=15〜27m)にかけて分布するほか,北東壁のTD=31〜33m付近に小分布する。層序的にはA1層やA2層を覆いA4層に覆われるが,A4層とA5層およびA6層が欠如し直接B層に不整合で覆われることが多い。

本層は亜角礫と角礫および亜円礫を含む砂礫からなる。礫は濃飛流紋岩礫を主体とし,花崗岩礫を伴い,わずかに美濃帯堆積岩礫を含む。礫の平均径は5〜30cmで最大径は120cmである。マトリックスはシルト混じり粗粒〜中粒砂を主体とするが,一部極粗粒砂からなる。色調はにぶい黄褐(10PYR 5/4)や黄褐(2.5Y 5/3,2.5Y 5/4,2.5Y 5/6)および明黄褐(10YR 6/6,10YR 6/8,2.5YR 6/8)を呈する。

CA4層:砂層(中粒〜粗粒砂,AT火山灰層挟在)

トレンチ起点側〜中央部にかけて(北東壁のTD=12〜14mとTD=24〜27m,南西壁のTD=11〜25m)断続的に分布するほか,終点側(北東壁のTD=37〜46m,南西壁のTD=39〜46m)にほぼ連続して分布する。A2層やA3層を覆って分布する。トレンチ終点側ではほぼA5層に整合的に覆われるが,トレンチ起点側〜中央部にかけてはA5層とA6層が欠如しB層に不整合に覆われる。

本層は淘汰のよい中粒砂を主体とし,礫混じり砂,粗粒砂,シルトおよび火山灰層を挟む。全体に層理や葉理が発達する。砂層はにぶい黄(2.5Y 6/4)や浅黄(2.5Y 7/4,5Y 7/4)および黄褐(10YR 5/6,10YR 5/8,2.5Y5/4,2.5Y 5/6)を呈する。火山灰層は南西壁のTD=12.5〜15mに層厚5〜10cmで挟在し,赤褐(5YR 4/8)や明赤褐(5YR 5/8)を呈する。

DA5層:礫混じり砂層

トレンチ終点側(北東壁のTD=38.5〜46m,南西壁のTD=35〜46.5m)に分布する。A2層やA4層を覆い,A6層に整合で覆われる。層厚10〜30cmの地層であるが北東壁・南西壁ともによく連続する。

本層は礫径1〜5cmの濃飛流紋岩の亜角礫を含む礫混じり砂からなる。砂の粒径は粗粒〜中粒砂で,細粒砂や極粗粒砂を挟む。砂層中に酸化マンガン粒子を多く含む。上部の10cm程度には風化帯を伴う。色調はにぶい黄(2.5YR 6/4)や明黄褐(10YR 6/6,10YR 6/8)および黒(10YR 2/1)を呈する。

EA6層:シルト質砂層

トレンチ終点側(北東壁のTD=38.5〜47.5m,南西壁のTD=36〜47.5m)に分布する。A5層を整合で覆い,B層に覆われる。

本層はシルト質砂および砂質シルトからなる。堆積構造は認められない。上部の5〜30cmには風化帯を伴う。色調は新鮮部は明青灰(10BG 7/1)を呈し,風化部では明黄褐(10YR 6/8)や明褐(7.5YR 5/8)を呈する。

FB1層:砂礫層(マトリックス腐植質,14C年代:2010±40yBP[T1C4])

トレンチ北東壁のTD=9〜21mの深度2〜2.5mに層厚10〜30cmのほぼ層状に分布し,南西壁には分布しない。A層を不整合で覆い,B2層に覆われる。

本層は礫径3〜10cmの亜角礫を含む砂礫層である。マトリックスは腐植質なシルトが主体で中粒〜極粗粒砂を含むことがある。色調は褐灰(10YR 4/1)を呈する。

GB2層:砂礫層(マトリックス粗粒砂)

トレンチ北東壁の起点付近から中央部にかけて(TD=6〜24.5m)分布するほか,南西壁の起点付近(TD=12.5〜16.5m)に分布する。A1層を整合で覆う部分が多いが,一部でB1層を不整合で覆う。層厚は5〜8mである。

本層は亜角礫を含む砂礫層である。礫の平均径は3〜10cmで最大径は25cmである。マトリックスは中粒〜極粗粒砂で,色調は褐灰(10YR 4/1)を呈する。

HB3層:砂礫層(マトリックス極粗粒砂,非常にゆるい)

トレンチ北東壁の起点付近(TD=0〜4m)と中央部〜終点付近にかけて(TD=22〜39m),南西壁の起点〜中央部にかけて(TD=0〜35m)分布する。本層は大部分でA層を不整合で覆い,B4層〜B7層に覆われる。本層はA層を浸食し堆積しており,両層の不整合面にはトレンチ中央部〜終点部(北東壁のTD=26〜39mと南西壁のTD=25〜35m)とトレンチ起点付近(北東壁のTD=1mから南東壁のTD=2m)に凹形の流路跡がみられる。層厚は概ね50〜150cmで,層厚の変化が顕著である。

本層は亜角礫主体の砂礫層である。礫は濃飛流紋岩礫が主体で花崗岩礫を伴う。礫の平均径は5〜30cmで最大径は100cmである。マトリックスは粗粒〜極粗粒砂で中粒砂を含むことがある。色調は黄褐(2.5Y 5/4,2.5Y 5/3)や明黄褐(2.5Y 6/6)を呈し,酸化部は赤褐(7.5YR 3/3),一部基底部付近では黒褐(7.5YR 3/2)を呈する。

IB4層:礫混じり砂層(マトリックス細粒〜中粒砂)

トレンチ北東壁では起点から終点にかけて断続的(TD=7〜24m,33〜37m,45.5〜48m)に,南西壁では中央部付近と終点付近(TD=33〜36m,47〜49m)にわずかに分布する。層厚は一般に20〜50cmで,終点付近では層厚100cm程度である。

本層やB5層およびB6層は層相が酷似することや地層が漸移的に変化することから,ほぼ同時期の堆積物と見られる。またB7層はトレンチ北東壁のTD=16〜17mでB5層およびB6層と指交関係にあることが確認できるるうえ,B7層はB4〜B6層の上位に分布することも下位に分布することもある。これらの事象からB4層,B5層,B6層およびB7層はいずれもほぼ同時期の堆積物であるとみなせる。B4層を含めたこれらの地層はA層やB2層およびB3層を覆い,トレンチ上部の耕土および盛土直下に断続して分布する。

本層は礫径5〜10cmの亜角礫および亜円礫を含む礫混じり砂からなる。砂は細粒砂が主体で粗粒砂を伴う。色調は浅黄(5Y 7/3)や灰白(7.5Y 7/2)を呈し,酸化部では明赤褐(2.5YR 7/2)や燈(7.5YR 7/8)を呈する。

JB5層:腐植質土層(14C年代:1240±70yBP[T1C1])

トレンチ北東壁の起点側〜中央部(TD=7〜18.5m,TD=23.5〜26.5m)にかけて分布する。TD=7〜18.5mではほぼ層状に分布し層厚は20cm程度である。TD=23.5〜26.5mでは凹地を埋積するように堆積しており最大層厚は80cm程度である。B4層およびB6層とは漸移する。

本層は腐植土と腐植質シルトと砂質シルトおよびシルト質細砂からなる。黒褐(2.5Y 3/1)や暗灰(2.5Y 4/2)および黄褐(2.5Y 5/3)を呈する。明瞭な層理や葉理は見られない。

KB6層:砂層(細粒砂)

トレンチ北東壁では起点から終点にかけて(TD=7〜19m,21.5〜23.5m,26.5〜27.5m,28.5〜33.5m,36〜38m,47.5〜49m)断続的に分布する。トレンチ南西壁では起点付近(TD=14〜16m)と中央部(TD=29〜30m,33〜36m)にわずかに分布する。

本層は主に細粒砂からなり,シルト質細粒砂や中粒砂および礫混じり砂を伴う。黄褐(2.5Y 5/4)やオリーブ黄(5Y 6/3,5Y 6/4)を呈する。明瞭な層理や葉理は見られない。

LB7層:砂礫層(マトリックス極粗粒砂)

トレンチ北東壁では起点から終点にかけて(TD=7〜17m,19〜22m,29.5〜30.5m,37.5〜46.5m)断続的に分布する。トレンチ南西壁では起点付近(TD=10〜19m)と終点付近(TD=35.5〜48m)に分布する。

本層は亜角礫および亜円礫を主体とする砂礫からなる。礫は濃飛流紋岩礫が主体で花崗岩礫を伴う。礫は平均径3〜10cmで,最大径65cmである。マトリックスは粗粒砂および極粗粒砂で,にぶい黄(2.5Y 6/4)や黄褐(2.5Y 5/4)および明褐(7.5YR 5/6)を呈する。非常にゆるい地層である。

(b)火山灰層とその周辺の地質(南西壁TD=12〜18m)

T1トレンチ南西壁のTD=12.5〜15m,D(地表からの深さ)=2.3m付近のA4層中に火山灰層が挟在する。詳細スケッチ(縮尺1/20)はT1トレンチ南西壁のTD=12〜18mで,火山灰層の分布と連続性の把握を目的として実施した。(図3−1−4−3写真3−1−4−1

詳細スケッチ範囲では,火山灰層とその上下の地層の連続性を追跡するためにA4層をA4−1〜A4−9層に細分した。

火山灰層を含むA4−4層はA4層中に挟在する層厚5〜15cmの砂質シルト層で,上位層と下位層は砂層である。TD=15.9m付近でA3層にアバットして消滅し,TD=12.5m付近ではA4−8層に浸食され消滅する。火山灰層はA4−4層中に層厚5〜10cmの純層として産し(写真3−1−4−2),TD=12.2〜13.7mではよく連続するが,その側方延長部では断続的に分布する。

以下に,詳細スケッチ結果について述べる。

@A3層:砂礫層(マトリックス極粗粒砂)

TD=16〜18m,D=2.3〜3mの法面下部に分布する。

亜角礫主体の砂礫層で,角礫を含む。礫は流紋岩礫主体で花崗岩礫を伴う。礫径は平均径3〜15cmで,最大径は50cmである。マトリックスはシルト混じり極粗粒砂およびシルト混じり粗粒砂で,オリーブ黄(5Y 6/4)や灰オリーブ(5Y 5/3)を呈する。礫含有率は50〜60%のゆるい地層である。

AA4−1層:シルト質砂層

TD=14.1〜15.8m,D=2.7〜2.9mに分布する。

シルト質細粒砂およびシルト質極細粒砂からなる。薄くレンズ状に細粒砂や中粒砂を挟むことがある。新鮮部は明オリーブ灰(5GY 4/1)で,酸化部は明黄褐(10YR 6/6,2.5Y 6/6)を呈する。やや締まった地層である。

BA4−2層:砂層(粗粒砂および極粗粒砂)

TD=13.5〜15m,D=2.4〜2.7mとTD=12.2〜12.8m,D=2.6〜2.8mに分布する。A4−1層の上位でA4−3層に位置付けられる。側方連続性は良くない。

粗粒砂および極粗粒砂からなる。細礫をわずかに含む。灰オリーブ(5Y 6/2)を呈する。ゆるい地層である。

CA4−3層:砂層(中粒砂)

TD=12.5〜15.9m,D=2.3〜2.7mに分布する。A4−1層とA4−2層を整合で覆い,A4−4層に整合で覆われる。TD=15.9m,D=2.6m付近ではA3層を不整合で覆う。

淘汰の良い中粒砂主体で,A4−1層との境界付近はシルト混じり砂である。不明瞭な葉理が見られる。灰オリーブ(5Y 6/2)や明黄褐色(2.5Y 6/6)および褐色(10YR 4/6,7.5YR 4/6)を呈する。さらさらしたゆるい地層である。

DA4−4層:砂質シルト層(AT火山灰層を挟む.炭化した植物片を含む)

TD=12.5〜15.9m,D=2.2〜2.6mに分布する。A4−3層を整合で覆い,A4−5層とA4−6層に整合で覆われる。TD=15.9m,D=2.5m付近ではA3層を不整合で覆う。TD=12.5m,D=2.4m付近ではA4−8層により浸食され不整合で覆われる。TD=12.5〜13.6m,D=2.3〜2.4mではB層に不整合で覆われる。

砂質シルトを主体とし,火山灰層を挟む。全体に炭化した植物片(根)を多く含む。火山灰層は2層ある。上位のものはTD=12.5〜14.7m,D=2.3〜2.4m付近にほぼ連続して挟まれる層厚5〜10cm火山灰層である。下位の火山灰を含む地層はTD=13.1〜13.9m,D=2.3〜2.4mに層厚1〜2cmの薄層として挟まれ,火山ガラスを含む砂質シルト〜シルト質極細粒砂である。上位の火山灰層は明赤褐色(5YR 5/6,5YR 5/8),赤褐色(5YR 4/8),燈(5YR 6/6)およびにぶい燈(5YR 6/4)を呈し,下位の火山灰を含む砂質シルト〜シルト質極細粒砂は明赤褐(5YR 3/4)を呈する。A4−4層自体の砂質シルトの色調は,灰白(5Y 7/2),灰黄(2.5Y 6/2)および明黄褐(2.5Y 6/6)を呈する。やや締まった地層である。

EA4−5層:礫混じり砂層(粗粒砂および極粗粒砂)

TD=14.8〜16.3m,D=2.3〜2.5mでA4−6層中に挟まれ分布する。

礫径1〜3cmの亜角礫および亜円礫を含む粗粒砂および極粗粒砂からなる。にぶい黄(2.5Y 6/3)を呈する。ゆるい地層である。

FA4−6層:砂層(中粒砂)

TD=14.6〜18m,D=2.1〜2.5mに挟まれ分布する。A4−4層を整合で覆い,上方に向かって細粒化しA4−7層に漸移する。TD=15.9〜18.0m,D=2.2〜2.5mではA3層を不整合で覆い,TD=14.6〜16.7m,D=2.2m付近ではB層に不整合で覆われる。

中粒砂主体の砂層で,上方に細粒化し上部2〜5cmは細粒砂となる。全体にシルトをわずかに含む。層理や葉理は見られない。にぶい黄(2.5Y 6/3,2.5Y 6/4)や明黄褐(2.5Y 6/6)を呈する。ゆるい地層である。

GA4−7層:シルト質砂層(炭化した植物片を含む)

TD=16.7〜18m,D=2.0〜2.2mに分布するほか,TD=14.7〜14.8m,D=2.2m付近にわずかに分布する。下位のA4−6層から漸移する。上方ではB層に不整合で覆われる。

シルト質細粒砂およびシルト質極細粒砂からなり,炭化した植物片(根)をわずかに含む。黄褐(10YR 5/6,10YR 5/8,2.5Y 5/6)および,明黄褐(10YR 6/6)を呈する。ゆるい地層である。

HA4−8層:礫混じり砂層(マトリックス極粗粒砂)

TD=12.0〜12.5m,D=2.3〜2.7mに分布する。A4−2層とA4−3層およびA4−4層を浸食・埋積した地層である。上方に向かって細粒化しA4−9層に漸移する。

礫径1〜5cmの亜角礫および角礫を含む礫まじり砂で,マトリックスは極粗粒砂からなる。A4−4層に含まれる火山灰を偽礫として含む。

灰オリーブ(5Y 6/2)を呈する。

IA4−9層:シルト層

TD=12.0〜12.5m,D=2.1〜2.4mに分布する。A4−8層の浸食による流路を埋積した堆積物である。下位のA4−8層から漸移する。B層に不整合で覆われる。

シルト質細粒砂およびシルト質極細粒砂からなる。黄褐(10YR 5/6,10YR 5/8,2.5Y 5/6)および,明黄褐(10YR 6/6)を呈する。ゆるい地層である。

JB2層:砂礫層(マトリックス粗粒砂)

TD=12.4〜13.8m,D=1.8〜2.3mとTD=14.6〜16.5m,D=1.7〜2.2mに分布する。A層を不整合で覆い,B3層に覆われる。

角礫および亜角礫を主体とする砂礫からなる。礫は濃飛流紋岩礫が主体で,花崗岩礫を伴う。礫径は平均径3〜10cmで,最大径40cmである。礫含有率は40%程度である。マトリックスは中粒砂および粗粒砂でシルトをわずかに含む。灰オリーブ(5Y 5/3)や明黄褐(2.5Y 6/6)を呈する。ゆるい地層である。

KB3層:礫層(マトリックス極粗粒砂)

TD=12.0〜18.0m,D=1.1〜2.3mに分布する。A層を不整合で覆い,B7層に覆われる。一部でB2層を覆う。

亜角礫主体の礫からなり,角礫を伴う。礫は濃飛流紋岩礫が主体で,花崗岩礫を伴う。礫径は平均径3〜20cmで,最大径60cmである。礫径5cm以下の礫は角礫が多い。礫含有率は50〜60%である。マトリックスは粗粒砂および極粗粒砂からなる。全体に酸化により赤色化しており,特に上部で顕著である。明黄褐(2.5Y 6/6)や黄褐(2.5Y 5/4)および明褐(7.5YR 3/3)を呈し,酸化部は赤褐(2.5YR 4/6)を呈する。ゆるい地層である。

LB6層:砂層(細粒砂)

TD=13.8〜16.3m,D=0.5〜1.0mとTD=17〜18m,D=0.9〜1.0mに分布する。詳細スケッチ範囲ではトレンチに出現する地層中の最上位層で,B7層を覆う。

細粒砂を主体とし中粒砂を含む。わずかにシルト分を含む。本層下部には礫径3〜10cmの礫を含む。黄褐(2.5Y 5/4)やオリーブ褐(2.5Y 4/4)を呈する。ゆるい地層である。

MB7層:砂礫層(ゆるい砂礫層.マトリックス極粗粒砂)

TD=12.0〜18.0m,D=0.7〜1.7mに層厚30〜90cmの連続した地層として分布する。調査範囲ではB3層を覆い,B6層に覆われる。

亜角礫および角礫を主体とする砂礫からなる。礫は礫径5〜20cmで,最大径は50cmである。礫種は濃飛流紋岩礫が大半を占め,わずかに花崗岩礫を含む。礫含有率は40〜50%である。マトリックスは極粗粒砂および粗粒砂で,さらさらしている。にぶい黄(2.5Y 6/4)を呈する。非常にゆるい地層である。

(c)地層の連続性と断層の有無

T1トレンチのA層下部(A1層〜A3層)は砂礫主体の層相で,A層上部(A4層〜A6層)は砂およびシルト主体の層相である。A層上部(A4層〜A6層)はTD=6〜20m付近とTD=35〜49m付近に分布する。A4層の基底面は深度TD=6〜20m付近では深度1.4〜2mに位置し,TD=35〜49m付近では深度3〜3.7mに位置する。A層上部はトレンチ起点付近やトレンチ中央部ではB層に浸食され欠如するが,層序や層相からB層の浸食による欠如区間を挟んで対比可能である。火山灰層(AT)は南西壁のTD=12.5〜15mでA4層中に挟まれて分布する。A層は全体にやや締まった地層である。

B層の下部は砂礫主体の層相(B1層〜B3層)で,上部は砂およびシルト主体(B4層〜B7層)の層相である。B層下部はマトリックスの特徴の違いから3層準に区分できるが,各層の境界は不明瞭で漸移的である。流路跡に相当するトレンチ中央〜終点(北東壁のTD=26〜39mと南西壁のTD=25〜35m)付近では礫径の大きな礫を含む。B層上部は基底部(B1層)および上部(B5層)に腐植質シルトや腐植土を含み,砂礫を伴う。B層上部の各層が連続して観察される北東壁のTD=14m付近では上部腐植土(B5層)と砂層(B6層)の間に砂礫層(B7層)が挟まれるが,北東壁のTD=30m付近では砂層(B6層)の上位に砂礫層(B7層)が分布する。B層上部の砂礫層はB7層として一括したが,複数の層準のものが含まれている。ただし,B7層の連続性は一般によくない。

T1トレンチにおいて,地表で変位地形として認識されたのは,TD=18m付近に存在する高さ約1.5mの崖である。この崖直下の地層の連続性について見てみると,

@南西壁のTD=11〜25mにかけてATを挟在するA4層ががほぼ連続し,かつ上位のB層との不整合面も連続する。

A北東壁において,TD=9〜21m間のA層とB1層の不整合面,TD=7〜19m間のB5層は連続する。

以上の@およびAで挙げた地層および地層境界の識別は,岩相の違いによって明瞭であり,この間に断層変位は認められない。従って,地表で変位地形として認識されたTD=18m付近の崖地形は,断層変位で形成されたものではないと判断される。

次に,より北側のTD=25〜49m間,南側のTD=0〜11m間について断層の存在について検討してみる。

B南西および北東壁のTD=27〜35m間では,A2層をB3層が不整合で覆っている。A2層はマトリックスがシルト質な砂礫からなり,マトリックスが極粗粒砂からなるB3層とは識別が容易に出来る。両層の不整合面は,両層とも砂礫層からなることから凹凸があるものの,ほぼ連続して追跡できる。

C南西および北東壁のTD=35〜49m間では,下位よりA4層(砂層),A5層(礫混じり砂層),A6層シルト質(混じり)砂層,B7層(砂礫層)などが累積している。これらの各層は,層相の識別が容易であり,各層および各層境界面は連続して追跡できる。

D南西壁のTD=0〜11m間では,A3層(砂礫層)がB3層に不整合で覆われる。A3層のマトリックスが粗粒〜細粒で締まっているのに対して,B3層のマトリックスは極粗粒砂で非常にゆるいことから,両層の識別は比較的容易にできるので,両層境界は連続して追跡できる。

以上のB,CおよびDからTD=25〜49m間,南側のTD=0〜11m間についても断層による地層および地層境界の変位は認められない。