2−2−5 火山灰分析

火山灰分析は,段丘堆積層や土石流堆積層など第四紀後期の地層の形成時期を推定するために実施した。火山灰分析では火山ガラスの含有率測定を33試料,鉱物組成分析を14試料,火山ガラスの屈折率測定を10試料および斜方輝石の屈折率測定を2試料実施した。

(1)鉱物分類方法

鉱物分類は表2−2−3のような鉱物区分で分類した。

表2−2−3 鉱物組成分類方法

(2)火山ガラスの形態分類方法

Nicon製の微量干渉装置を用い,火山ガラスの形態を立体的に観察した。

本分析ではガラス内に残る発砲跡の形態が,球状に発砲したバルーン型(B型),チューブ状に発砲したチューブ型(T型),おそらく大きな曲率のため泡の接合部がみられず,平板ないしはゆるく湾曲した扁平型(P型),および発砲の痕跡がみられないその他の型(O型)の4型に区分した。また,発砲の大きさは,長さ0.1mmの中に発砲跡が1〜2個しか入らない場合を大型(l),3〜7個入るものを中型(m),8個以上入るものを小型(s)とし,たとえばチューブ型(T型)で中径(m)のものをTm型と表現した。ただし,発砲密度については発砲跡のあるガラスのほとんどがほぼ完全に発砲(泡と泡が密着)しているため付記していない。

以上の基準に従い,接眼レンズに方眼ミクロメーターを装着して,ステージを回転させながら分類を行った。測定する個数は1試料ごとに200個を目途とした。

(3)屈折率測定方法

測定には,浸液の温度を直接測定しつつ屈折率を測定する温度変化型測定装置を試料した。測定精度は火山ガラスで±0.0001程度である。

顕微鏡は,ニコン顕微鏡ECLIPSE600シリーズ(偏平・位相差装置付),位相差用対物レンズ(10倍および長作動20倍),光源は12V100Wハロゲンランプ,全誘電干渉フィルター(589.3mm)を使用した。温度変化装置として全面等温度透明加温板(0.1℃の精度で制御可能),プログラム温度コントローラー(0.1℃の精度で制御可能),高感度熱電対(0.1℃の精度で測定可能),パーソナルコンピューターを使用した。

以下に測定の手順を示す。

顕微鏡ステージ上に設置した加圧板に,浸液と試料および熱電対とを密封したごく薄いカプセルを載せる。カプセルは,大きさ18×24mm,厚さ0.12〜0.17mmのガラス板(下板)と,直径18mmで同じ厚さのガラス板(上板)との間に,熱伝導性の高いシーリング材を使用して浸液と試料および熱電対を密封したもので,総厚が0.5〜0.6mm程度である。浸液は単一化学式を有する有機化学合成液である。つぎに,加温板の温度を制御して,ほぼ一定の温度変化速度で,浸液および試料の温度を室温〜60℃の範囲で変化させる。この様子を,位相差状態の顕微鏡で観察する。観察時の波長はナトリウムD線(589.3mm)である。この画像を観察しながら,ガラスの輪郭が消失する温度を記録した。屈折率は,あらかじめ作成した各浸液の温度と屈折率との一次式から変換され,パーソナルコンピューターに記録される。測定個数の目処はガラスが30片,斜方輝石が10片である。ただし,値にばらつきがある試料では,モードを把握できるまで測定した。記録された屈折率,熱伝対の温度データはリアルタイムにパーソナルコンピューターに入力され,温度,測定個数などとともに屈折率ヒストグラムとして出力した。