(1)手賀野断層

既往調査結果と本年度調査結果から手賀野断層の性状は以下のようにまとめられる。

@手賀野断層は恵那盆地に分布する北東−南西方向で長さ約7.5kmで南東側隆起の低角逆断層である。北東側の長さ約4.5km区間では,明瞭な変位地形がほぼ連続して分布している。南西部の長さ約3km区間では,リニアメントが2条に分岐し変位地形は不明瞭である。トレンチ調査を実施した中津川市中垣外地区は,北東側断層の南西端部に位置する。

A地形面の年代は,以下の2点が新たに明らかになった。

 ・手賀野断層北東部に分布する手賀野面は,木曽川泥流堆積物に覆われることから約5万年前以前の堆積物であるとされていたが,今回の地表精査によって,手賀野面(L1−1面)の形成は木曽川泥流堆積物の堆積・浸食の後であることが明らかとなった。従って,手賀野面(L1−1面)の形成年代は5万年前以降となった。

 ・トレンチ調査地点の東側に分布するM1面構成層の最上部から広域テフラであるK−Tz(7.5〜9.5万年前)が含まれることが明らかになった。

これらの結果も踏まえて手賀野断層の平均変位速度を算出すると,北東部では0.08〜0.16m/千年で,南西部では0.02〜0.04m/千年である。北西部と南東部は平均変位速度が大きく異なっている。

Bトレンチ調査は当初変位地形が明瞭な断層北東部の中津川市手賀野地区で実施する予定であったが,地元情勢を考慮した中津川市の判断で実施できず,第2候補地点の中津川市中垣外地区で実施した。その結果,直接断層は確認できなかった。しかし,T2トレンチにおいて液状化跡が認められた。液状化の原因が手賀野断層による活動であるという確証は無いが,手賀野断層を想定した位置付近において液状化が認められることから,その可能性はあるものと判断される。液状化の時期は地層の年代測定から5400〜7400年前であると判断される。