(2)中洞地点

図3−3−15−2

<地形>

調査地の地形は,調査地北西部の丘陵と南東部を占める起伏に富む山地から構成される.

北西部は領家花崗岩類とこれを覆う土岐砂礫層から構成され,緩やかな丘陵とこれらの間の谷を埋める土石流堆積物が形成する緩斜面からなる.丘陵を構成する尾根は標高420m〜450mの定高性を示し,北側に緩く傾斜する.

南東部は領家花崗岩類の硬質な岩盤から構成される.起伏に富んだ急峻な地形を形成する.

以上の地形的特徴は,調査地中央部を東北東から西南西方向に延長される恵那山断層によって境される.

<岩相および分布>

領家花崗岩類

調査地の基盤をなし広く分布する.

優白色の粗粒花崗閃緑岩を主体とし,細粒花崗岩を含む.本来は硬質・緻密な岩石であるが,全般に風化作用によるマサ化が進み表層は土砂状を呈することが多い.調査地南東部の山地の深い谷では硬質な岩盤が露出する。

土岐砂礫層

調査地北部,恵那山断層北側の標高390m以上に分布する.下位からクサリ角礫層,シルト層,砂礫層から構成される。

・クサリ角礫層:

調査地の最下位層を構成する.標高390m〜410m付近に分布する.美濃帯堆積岩類のうち頁岩・砂岩の半クサリ角礫を主体とし,領家花崗岩類の亜角礫あるいはチャートの円礫を含む。礫径は平均で3〜20cmである.基質は灰白色〜淡青灰色を呈するシルト質砂である.層厚は約10〜12mである

・シルト層:

クサリ角礫層直上部と砂礫層中に薄いレンズ状に挟在される.灰白色〜淡青灰色を呈する塊状無層理の砂質〜砂混じりシルトである。全般に均質である.最上部では砂が多く混じりシルト質砂様を呈し,葉理が認められる部分もある.層厚は約5mである。

・砂礫層:

チャート,砂岩,頁岩などの美濃帯堆積岩類および領家花崗岩類の円礫を主体とする砂礫層である。礫径は概ね5cm以下である.最大礫径は10cm程度である.基質は白色〜淡黄褐色を呈する砂,シルト混じり〜シルト質砂からなる.層厚は40m+である.

土石流堆積層

各谷に分布する.斜面傾斜3°〜12°の緩傾斜面を形成する.現河床からの比高(0〜20m)により土石流堆積層V〜Zに分類される.

土石流堆積層Vは,領家花崗岩類の角礫〜亜角礫を主体とする砂礫層である.一部に半クサリ礫を含む.基質はシルト混じり砂からなる.全般に不淘汰である.層厚は5〜10m程度である.土石流堆積層W〜Zは,領家花崗岩類の角礫〜亜角礫を主体とし,一部に土岐砂礫層の円礫を含む砂礫層である。基質はシルト混じり砂からなる.全般に不淘汰である.層厚は2〜8m程度である.

崖錐堆積層

各谷および山腹斜面に分布する.

後背地から供給される礫,砂,シルトから構成される.層厚は1〜5m程度である.

<地質構造> 

土岐砂礫層は、ほぼ水平に堆積すると推定される.恵那山断層近傍20〜30mでは,断層に近づくに従って北に急角度(最大90°)に傾斜している。

<断層破砕帯等>

調査地東部の尾根筋に土岐砂礫層と領家花崗岩類との断層が認められる(N−1地点:スケッチおよび写真).幅約4〜5cmの淡灰色の断層ガウジが認められる.また,領家花崗岩類はマサ化しているものの角礫状を呈し破砕している.断層面の走向傾斜は,N66°E/57°Sとほぼリニアメントに調和的な走向であり,傾斜は中角度を示している.断層露頭での土岐砂礫層の地質構造は不明である.土岐砂礫層以降の新期堆積物と断層との関係は不明である.

このほかリニアメントとの位置とは一致しないものの,領家花崗岩類中に破砕幅数cm程度の断層破砕帯が数カ所認められる.これも新期堆積物との関係は不明である.

<考察>

土岐砂礫層と領家花崗岩類との断層露頭は認められるものの,第四系更新統以降の新期堆積物に変位を与えている断層露頭は認められない.

調査地西部の恩ヶ洞池東方の沢の土石流堆積物W(1)の形成する緩斜面上においてほぼ恵那山断層通過位置に相当する地点に,北西側が高さ3m程度低い段差地形(N−2地点:写真3−3−13)が認められるが,圃場整備を受けている畑地である.しかし,現時点においても段差地形は明瞭であり,原地形をある程度保存している可能性が高く,この面に変位を与えてる可能性も考えられる.

以上から中洞地点では,恵那山断層は領家花崗岩類と土岐砂礫層と境界をなす地質断層であるが,第四紀更新統後期以降の活動を示す可能性を残す地点はあるものの,その活動を明確に示すな情報は得られなかった.

写真3−3−13 N−2地点 断層通過地点付近の段差地形

N−1地点断層スケッチと写真