(1)住久保東方地点

図3−3−15−1

<地形>

調査地の地形は,調査地北部の丘陵性の山地と南部を占める起伏に富む山地から構成される.

北部は美濃帯堆積岩類と領家花崗岩類の基盤岩類およびこれを覆う土岐砂礫層から構成され,緩やかな丘陵性の山地とこれらの間の谷を埋める土石流堆積物が形成する緩斜面が広がる.丘陵性の山地を構成する尾根は標高420m〜450mの定高性を示す.

南部は領家花崗岩類の硬質な岩盤から構成されている.起伏に富んだ急峻な地形を形成している.山地を構成する尾根は標高530m〜570mの定高性を示す.

以上の地形的特徴は,調査地中央部を東北東から西南西方向に延長する恵那山断層によって境される.

<岩相および分布>

美濃帯堆積岩類

調査地北西部,恵那山断層北西側に分布する.

暗灰色〜灰色を呈する細粒〜中粒砂岩を主体とし,層厚数cmの頁岩を挟在する.全般に花崗岩の貫入による接触変成作用を受けており硬質である。

領家花崗岩類

調査地の3/4を占めて広く分布する.

優白色の粗粒花崗閃緑岩を主体とし,細粒花崗岩を含む。本来は硬質・緻密な岩石であるが、全般に風化作用によるマサ化が進み表層は土砂状を呈することが多い。

美濃帯堆積岩類に接触変成作用を与えている。

貫入岩類

調査地中央部に分布する。領家花崗岩類を貫いて、幅数十cmの岩脈が数条分布する。

暗灰色の硬質・緻密な安山岩である。花崗岩との境界部付近には幅数cmの急冷周縁相が認められる。貫入面の走向傾斜はN10°W/89°〜90°である。

領家花崗岩類と美濃帯堆積岩類の境界には幅1〜2mの花崗斑岩の岩脈が認められる。貫入面の走向傾斜はN34°W/84°である。

土岐砂礫層

調査地北西部、恵那山断層北側の標高430m〜450m以上に分布する。

チャート,砂岩,頁岩などの美濃帯堆積岩類および領家花崗岩類の円礫を主体とする砂礫層である。礫径は平均1〜10cmである。最大礫径は20cm程度である。基質は白色〜淡黄褐色を呈するシルト質砂からなる。層厚は40m+である。

基盤の美濃帯堆積岩類および領家花崗岩類を不整合に被覆する.

土石流堆積層

各谷に分布する.斜面傾斜3°〜12°の緩傾斜面を形成する.現河床からの比高(1〜8m)により土石流堆積層W〜Zに分類される。

土石流堆積層Wは,領家花崗岩類の角礫〜亜角礫と土岐砂礫層の円礫を主体とする砂礫層である。一部に半クサリ礫を含む.基質はシルト混じり砂からなる.全般に不淘汰である.層厚は2〜5m程度である.

土石流堆積層X〜Zは,領家花崗岩類の角礫〜亜角礫と土岐砂礫層の円礫を主体とする砂礫層である.基質はシルト混じり砂からなる.全般に不淘汰である.層厚は1〜5m程度である.

崖錐堆積層

各谷および山腹斜面に分布する.

後背地から供給される礫,砂,シルトから構成される.層厚は1〜5m程度である.

<地質構造> 

美濃帯堆積岩類

N75°W〜N76°E/69°〜90°Nの高角度で北に傾斜する単斜構造を示す.

土岐砂礫層

ほぼ水平に堆積すると推定される.基底面の高度は東に向かって低くなっている.

恵那山断層近傍の構造は不明である.

<断層破砕帯等>

(株)日本マグネシウム社の工場南側切土斜面に土岐砂礫層と領家花崗岩類とを境する断層が認められる(SE−1地点:スケッチおよび写真)。幅約10cmの紫灰色の断層ガウジが認められる.また,領家花崗岩類はマサ化しているものの角礫状を呈し破砕している.断層面の走向傾斜は,N65°E/25°Sとほぼリニアメントに調和的な走向であるが,傾斜は30°以下の低角度を示している.断層露頭での土岐砂礫層の地質構造は不明である.土岐砂礫層以降の新期堆積物と断層との関係は不明である.

このほかリニアメントとの位置とは一致しないものの,領家花崗岩類中に破砕幅200cm程度の断層破砕帯が認められる(SE−2地点:スケッチおよび写真).これも新期堆積物と断層との関係は不明である.

<考察>

第四系更新統以降の新期の堆積物に変位を与えている断層露頭は認められない.

(株)日本マグネシウム社の工場と送電線鉄塔間の土石流堆積物Wの形成する緩斜面上においてほぼ恵那山断層通過位置に相当する地点に,北西側が高さ1m程低い段差地形(SE−3地点:写真3−3−12)が認められるが,不明瞭であり断層変位地形とは認定し難い.

恵那山断層通過地点は,断層北西側が南西側に比較して相対的に尾根筋の傾斜が緩い傾斜変換点となっているが,地質を反映した組織地形の可能性もあり断層変位地形とは認定し難い.このほかに恵那山断層北西方約100m付近において沢の右方向の屈曲もみられるが,断層の存在を示す地形あるいは地質情報は認められない.

以上から住久保東方地点では,恵那山断層は領家花崗岩類と土岐砂礫層と境界をなす地質断層であるが,第四紀更新統以降の活動を示す可能性を残す地点はあるものの,その活動を明確に示す情報は得られなかった.

写真3−3−12 SE−3地点(杉久保東方)

リニアメント近傍、土石流堆積層が形成する緩斜面に認められる高さ1m程度の段差地形

SE−1地点の断層スケッチと写真

SE−2地点の断層スケッチ