(3)TP3

V1面に認められる”低断層崖(比高3〜4m)”を横断して長さ約20mのピットを掘削した。

TP3ピットの展開図を(図3−1−9)に示す。出現する地質は上位からA層、B層およびC層からなる。A層は盛土および耕土である。B層は砂層およびシルト層主体の地層で最下部に砂礫層を伴う。C層は砂礫層主体の地層で、最上部に砂層を伴う。層相と地層の連続性から、B層は上位からB1層、B2層、B3−1層、B3−2層およびB4層に区分される。また、C層はC1層、C2層およびC3層に区分される。地形面分布と他ピットとの地層の対比から、B層はV3面構成層と判断される。C1層はV2面構成層と判断される。C2層およびC3層はL1面構成層と判断される。

当ピットでは盛土および耕土は西壁と東壁ではTD=0〜14mで層厚1m程度で、TD=14〜22mでは層厚30〜50cmである。B層は概ね深度3m以浅に分布し、わずかに下流(北)側に傾斜している。B層は連続して分布しており、地質構造の乱れは認められない。C層は幾分凹凸があるものの、概ね深度3m以深に分布する。地層の不連続や強震現象などに起因する堆積構造の乱れは認められない。

当ピットは空中写真判読および地表踏査からTD=5〜6mとTD=12〜14mの崖地形を横断する位置で掘削した。いずれの崖地形も、崖直下の地層は連続しており、断層変位はなかった。従って、”低断層崖”自体は断層変位を直接あらわすものではないものと判断される。しかし、V1面の撓みは鉛直で3〜4m以上であり,その形成原因として手賀野断層の存在は否定できず、ピットに出現した地層が断層の下盤側である可能性が高いので、断層の位置は掘削範囲より南側に外れている可能性がある。

A層:盛土および耕土

本層は主に砂礫からなる盛土と黒褐色の耕土からなる。

B1層:砂およびシルト(腐植土を伴う)

本層はトレンチに露出する地層のうち最上位層で,砂およびシルトからなり,最下部に腐植土を伴う。B2層を覆う。層相は淘汰のやや悪い粗粒砂を主体とし,主に上部にシルトを伴う。下部に弱い葉理がみられる。TD=0〜6mの最下部にほぼ連続的に腐植質シルトおよび腐植質砂を含む。全体に酸化し,明黄褐(10YR6/6, 10YR6/8)やにぶい黄(2.5Y6/4)を呈する。腐植質シルトおよび腐植質砂は黒(N2/)や暗灰(N3/)を呈する。

腐植質シルトの14C年代は23,680y.B.P.を示し、木片の14C年代は1,970y.B.P.を示す。

B2層:砂およびシルト

本層は層厚30〜50cmの連続した地層で,砂からなる。B3層およびB4層を覆い,B1層に覆われる。 層相はやや淘汰の悪い粗粒砂および極粗粒砂からなり,一部に細粒砂や礫混じり砂を伴う。シルト薄層を挟む。TD=0〜12m付近には本層上部に連続性のよいシルト層を挟む。色は青灰(10BG5/1)を呈し,酸化部は明黄褐(10YR6/8)やにぶい黄(2.5Y6/4)を呈する。

B3−1層:シルト

本層は東壁のTD=3.5〜13.5mのD=2〜2.7mと,西壁のTD=3.9〜15.5mのD=2.3〜2.7mに分布する。連続性のよいシルトで色は青灰(10BG5/1)を呈する。

B3−2層:砂

本層は東壁のTD=4.3〜18mのD=2.4〜2.8mに断続的に分布するほか,西壁のTD=11.2〜12mのD=2.4〜2.7mに小分布する。 層相は主に淘汰のよい細粒砂からなり,シルト混じり細粒砂や粗粒砂を挟む。わずかに礫を含むことがある。色は青灰(10BG5/1),酸化部はにぶい黄(2.5Y6/3, 2.5Y6/4)を呈する。

B4層:砂礫

本層は主にTD=9mより下流側のD=2.5〜3.5m付近に分布するほか,TD=2〜5m付近のD=2〜2.3m付近にわずかに露出する。層相は径3〜10cmの亜円礫を主体とする砂礫からなる。礫は美濃帯堆積岩類や濃飛流紋岩礫が主体である。径30〜60cmの花崗岩のクサリ礫をわずかに含む。マトリクスはシルト質粗粒砂およびシルト質細砂で,一部砂質シルトからなる。色は酸化し,浅黄(5Y7/4)を呈し,新鮮部は青灰(10BG6/1)を呈する。

C1層:砂

本層は西壁のTD=11.3〜20.3mのD=2.6〜3.5mに分布する。東壁には分布しない。層相は淘汰のよい細粒砂からなる。色は青灰(10BG6/1)を呈し,酸化部は灰白(5Y7/2)や浅黄(5Y7/3, 5Y7/4)を呈する。

C2層:砂礫

本層はTD=10mより下流のD=3m以深に分布する。層相は径30〜60cmの花崗岩巨礫を多く含む砂礫からなる。礫は平均径5〜20cmで,濃飛流紋岩や花崗岩の亜角礫主体である。マトリックスは粗粒砂で,色は青灰(10BG5/1, 10BG6/1)を呈する。

C3層:砂礫

本層はTD=10mより下流のおおよそD=4m以深に断続的に分布する。本トレンチに露出する地層のうち最下位の地層である。層相は径3〜10cmの美濃帯砂岩,チャートおよび濃飛流紋岩の亜角礫を主体とし,径20〜50cmの花崗岩亜角礫を含む。マトリックスは粗粒砂からなる。全体に酸化し,色は黄褐(10YR5/8)や明黄褐(10YR6/8)を呈し,新鮮部は青灰(10BG5/1)を呈する。