(5)恵那山断層

恵那山断層は,リニアメントの明瞭さと連続性から土岐市柿野から山岡町原に至る南西部(長さ約18km)と,山岡町田沢から上矢作町阿岳を通過し長野県平谷村に至る北東部(長さ約24km;岐阜県側のみ約17km)に区分される。南東部と北東部は断層を横切る明智川付近の約1km区間にはリニアメントは判読されない。

@恵那山断層南西部

恵那山断層南西部は主に花崗岩からなる山地と主に瀬戸層群土岐砂礫層からなる丘陵地の境界に位置し,当区間の北東部の恵那山断層北西側には瑞浪層群が分布する。第四系は低位段丘相当と見られる土石流堆積層(1)(F5面相当,F6面相当)が沢に沿って小規模に分布する。恵那山断層主断層である断層露頭は,瑞浪市住久保(EN−6断層露頭),山岡町小万場〜天池(EN−25断層露頭,EN−26断層露頭,EN−27断層露頭)の4地点で確認され,いずれも花崗岩と瀬戸層群土岐砂礫層が南東側隆起の逆断層で接する。

土岐市鶴里町柿野中南方から土岐市住久保にかけての約7.5km区間は低断層崖様の地形(Loc.31,Loc.32)や沢の横ずれ様の地形(Loc.33,Loc.34)が断続的に認められる。土岐市鶴里町柿野中南方(Loc.31)ではリニアメント直下でF5面端部に直線的な比高約2mの崖地形が分布する(図3−1−5−15)。土岐市鶴里町八王子では土石流堆積面(F5面)が右横ずれ的な分布と直線的な崖地形が認められ,土岐市鶴里町白鳥町(Loc.33)では約150mの沢の右横ずれ屈曲様地形がみられる(図3−1−5−16)。土岐市住久保東方では3条の沢が系統的に約30m右横ずれ屈曲する(図3−1−5−17)。

瑞浪市上ノ洞から瑞浪市猿爪にかけての約6km区間はリニアメントはやや不明瞭で,リニアメントを横断する段丘面(L3面)や土石流堆積面(F5面とF6面)に断層変位地形は認められない。

瑞浪市東町から山岡町羽佐間にかけての約4.5km区間は大地形的な断層崖は明瞭でリニアメントの連続性もよい。当区間では花崗岩と瀬戸層群土岐砂礫層の地質断層露頭(EN−25断層露頭,EN−26断層露頭,EN−27断層露頭)が複数確認されたが,断層を横断して分布する複数の土石流堆積面(F5面,F6面)に断層変位地形は認められない。また,山岡町羽佐間では約100mの沢の右横ずれ屈曲が認められる(図3−1−5−18)。

A恵那山断層北東部

恵那山断層北東部は恵那山地中の山間盆地である岩村盆地南縁に分布し,岩村町三森山以東では恵那山地中に分布する。断層周辺の地質は花崗岩および瑞浪層群からなり,恵那山断層の主断層は概ね花崗岩と瑞浪層群の境界に分布する。これら先第四系を不整合で覆って高位段丘堆積層(H1面相当),低位段丘堆積層(L2面相当),土石流堆積層(F2面,F3面,F4面,F5面,F6面相当)が分布する。当区間では恵那山断層主断層の断層露頭は確認できなかったが,地質分布からみて花崗岩と瑞浪層群は断層接触関係にあると想定される。当区間では岩村町石畑(Loc.43,写真48写真49)や岩村町富田(Loc.46,写真50)などで,土石流堆積面に明瞭な断層変位地形が認められ,当区間の一部の断層が第四紀後期に活動した可能性が高いことが明らかとなった。

山岡町燈籠から岩村町石畑にかけての長さ約4km区間(Loc.41)では,リニアメントは不明瞭で連続性に乏しく複数のリニアメントが雁行して分布する。リニアメントは概ね花崗岩と瑞浪層群の境界付近に分布するが,花崗岩と瑞浪層群の境界の地質分布は不規則であり,詳細位置は一致しない。

山岡町水口から中津川市両伝寺南方にかけての長さ約6km区間では,高位段丘面や土石流堆積面(F3面,F4面)に断層変位地形が断続的に分布する(図3−1−5−19図3−1−5−20)。水口東方(Loc.42)でF4面に比高2〜3mの低断層崖様地形が認められる。岩村町石畑(Loc.43)でF3面,F4面に低断層崖様の地形(比高はそれぞれ2〜3m,3〜5m)が認められる。岩村本町(Loc.45)でF3面に比高約5mの低断層崖様の地形が認められる。岩村町富田(Loc.46)では,花崗岩と瑞浪層群との推定地質断層の延長部のF4面に比高3〜5mの明瞭な低断層崖が分布する。岩村町中富東方(Loc.47)ではH1面に比高3〜7mの低断層崖が分布する。

岩村町岩村から三森山北方の長さ約4km区間のうち,岩村町岩村から水晶山北方ま区間ではリニアメントは花崗岩分布域に分布し,水晶山北方から三森山北方までの区間ではリニアメントは花崗岩と瑞浪層群の境界に位置する。当区間ではリニアメントは遷緩線や鞍部地形などの判読要素からなり,リニアメントを横断するF5面やF6面など第四紀後期の地形面に断層変位地形は認められない。ただし,岩村町大円寺では,F3面,F4面に低断層崖様の崖地形が認められ(Loc.45),恵那山断層から分岐して分布する川上断層による変位地形の可能性が高い。

岩村町三森山以東の約8km区間(Loc.49,Loc.50)ではリニアメントは主に連続する鞍部地形として判読され,不明瞭である。地質分布との関連から言及すると,リニアメントの大部分は花崗岩中に分布し,一部花崗岩と瑞浪層群との境界の地質断層に沿って分布する。