(3)地質構造

@断層・破砕帯

本調査では,地表踏査で確認されたすべての断層露頭および破砕帯露頭について断層露頭観察カードを作成して巻末資料とした。付図4−1付図4−2付図4−3付図4−4図3−1−3−1図3−1−3−2図3−1−3−3図3−1−3−4に断層露頭位置図を示す。断層露頭番号の略号は屏風山断層を”BY−”,蕨平断層を”WD−”,野久保断層を”NK−”,恵那山断層を”EN−”,猿投山北断層を”SN−”,飯沼断層を”IN−”,川上断層を”KO−”とした。なお手賀野断層では断層や破砕帯露頭は認められなかった。屏風山断層,野久保断層,恵那山断層,猿投山北断層の各断層で,断層主部とみられる断層露頭および破砕帯露頭が確認された。これらの断層の露頭性状について以下に述べる。

(@)屏風山断層

屏風山断層では断層本体とみられる露頭が,瑞浪市大草(BY−7断層露頭)と中津川市中垣外南東(BY−35断層露頭)の2箇所で確認され,そのうち,BY−35断層露頭では第四系を切る断層が確認された。そのほか,瑞浪市論栃(BY−15断層露頭)では,花崗岩と瀬戸層群が北西側隆起の断層関係で接し,バックスラストであると判断される。BY−35断層露頭の記載は地表踏査(精査)の項で後述する。

(a)BY−7断層露頭(図3−1−3−5

BY−7断層露頭は屏風山断層南東の瑞浪市大草に位置する花崗岩と瀬戸層群土岐砂礫層を境する断層露頭で,有井(1958)により記載がある。本断層露頭では,花崗岩と瀬戸層群土岐砂礫層の砂層が逆断層で接し,花崗岩の一部は瀬戸層群の上に覆い被さるような産状をなす。断層面の走向傾斜はN49E53NEで,屏風山断層の全体の方向とはやや斜交し,有井(1958)により示されたN15E50Sともやや異なる。断層面には幅2〜3cmの淡緑色粘土を介在し,花崗岩中には幅数cmの緑色破砕部が多く発達する。

(b)BY−15断層露頭(図3−1−3−6

BY−15断層露頭は瑞浪市論栃に位置する。屏風山断層本体の約20〜30m南西に分布する花崗岩と瀬戸層群砂層を境する逆断層露頭で,北西側隆起バックスラストと判断される。断層面の走向傾斜はN51E62SEで,断層面には幅7〜8cmの淡褐色〜オリーブ色の半固結粘土が介在する。

(A)野久保断層

野久保断層周辺では中津川市梅平でリニアメント直下に破砕帯露頭(NK−1断層露頭)が分布し,野久保断層の主断層である可能性がある。

(a)NK−1断層露頭(図3−1−3−7

NK−1断層露頭は濃飛流紋岩中の破砕帯露頭で,主破砕部は走向傾斜N64E83NWを示し,幅2〜3cmの粘土が網目状に発達する。主破砕部の周囲の幅約1mは白色粘土を挟む土砂状の産状をなす。

(B)恵那山断層

恵那山断層では,花崗岩と瀬戸層群を境する断層露頭が土岐市柿野(EN−1断層露頭)土岐市入海道(EN−2断層露頭),瑞浪市住久保(EN−6断層露頭),山岡町小万場〜天池(EN−25断層露頭,EN−26断層露頭,EN−27断層露頭)に分布する。これらの断層露頭はEN−1を除いて,リニアメントの分布とほぼ一致している。山岡町天池〜羽佐間では瑞浪層群と瀬戸層群を境する断層露頭(EN−29断層露頭,EN−31断層露頭)が分布する。花崗岩と瀬戸層群が接する恵那山断層の主断層はほとんどが逆断層である。

(a)EN−1断層露頭(図3−1−3−8

EN−1断層露頭は土岐市柿野に位置し,花崗岩と瀬戸層群土岐砂礫層を境する逆断層露頭が認められる。断層面の走向傾斜はN67E79SEで南東側隆起である。断層面には幅4〜6cmの明褐色〜橙色粘土が挟在する。リニアメント分布とは一致しない。

(b)EN−2断層露頭(図3−1−3−9

EN−2断層露頭は土岐市入海道に位置する。本断層露頭では花崗岩と瀬戸層群土岐砂礫層との接触関係は確認されないものの,土岐砂礫層の層理面の急傾斜と,土岐口陶土層起源の破砕帯が認められる。破砕帯は幅30cm以上の灰白色粘土からなる。土岐砂礫層は破砕帯に近づくにつれて層理面の傾斜角度が急傾斜となる。断層面の走向傾斜はN86E78Sで,南東側隆起を示す。

(c)EN−6断層露頭[図3−1−3−10−1図3−1−3−10−2

EN−6断層露頭は土岐市住久保に位置し,花崗岩と瀬戸層群土岐砂礫層を接する逆断層露頭が認められる。中山(1985)に記載がある。本断層露頭では,花崗岩側は濃緑色を呈し剪断組織を有するカタクラサイトからなり,土岐砂礫層の層理面は急傾斜となる。断層面には幅3cm以下の暗緑色礫混じり粘土が挟在する。断層面の走向傾斜はやや不規則であるがN80E83Sを示し,当該地点付近の恵那山断層の方向とほぼ一致する。

(d)EN−25断層露頭(図3−1−3−11

EN−25断層露頭は山岡町小万場に位置し,花崗岩と瀬戸層群土岐砂礫層を境する断層が認められる。本露頭は陶土採掘のため出現した人工露頭である。急斜面に露出するため詳細観察不可能で走向傾斜は測定できなかった。

(e)EN−26断層露頭(図3−1−3−12

EN−26断層露頭は山岡町小万場に位置し,花崗岩と瀬戸層群土岐砂礫層を境する逆断層が認められる。本露頭は陶土採掘のため出現した人工露頭である。断層面の走向傾斜はN58E85Sで,断層面には幅約5cmの暗褐色〜黒褐色粘土を挟む。

(f)EN−27断層露頭(図3−1−3−13

EN−27断層露頭は山岡町天池に位置し,花崗岩と瀬戸層群土岐口陶土層を境する逆断層が認められる。本露頭は陶土採掘のため出現した人工露頭である。断層面の走向傾斜はN33E40SEである。本断層を覆う土石流堆積層(F5面相当)に断層変位は認められない。

(g)EN−28断層露頭[図3−1−3−14−1図3−1−3−14−2

EN−28断層露頭は山岡町天池に位置し,花崗岩と瀬戸層群土岐口陶土層を境する逆断層が認められる。本露頭は陶土採掘のため出現した人工露頭である。花崗岩中には,幅5〜30cmの黒〜灰色を呈する半固結した礫混じり粘土状破砕部を多く挟み,その方向は主断層面の走向傾斜に調和的である。瀬戸層群土岐口陶土層側には幅数10cm〜1mの瑞浪層群泥岩,砂岩,凝灰岩を挟む。主断層面の走向傾斜はN56E46SEで,黒〜灰色を呈する半固結した礫混じり粘土状破砕部を挟む。

(h)EN−29断層露頭(図3−1−3−15

EN−29断層露頭は山岡町天池に位置し,瑞浪層群と瀬戸層群土岐口陶土層を境する断層が認められる。本露頭は陶土採掘のため出現した人工露頭である。本断層露頭では,瀬戸層群土岐砂礫層と土岐口陶土層が断層に近づくにつれ急傾斜になる様子が観察される。急斜面に露出するため詳細観察不可能で走向傾斜は測定できないが,傾斜40°程度の正断層である。

(i)EN−31断層露頭(図3−1−3−16

EN−31断層露頭は山岡町天池に位置し,瑞浪層群と瀬戸層群土岐砂礫層・土岐口陶土層を境する正断層が認められる。本露頭は陶土採掘のため出現した人工露頭である。断層面は幅約10cmの淡灰色硬質粘土を挟み,幅約50cm区間に破砕組織が見られる。断層面の走向傾斜はN36E49NWである。

(C)猿投山北断層

猿投山北断層は,土岐市曽木町蘭仙北方(SN−18断層露頭)で花崗岩中に主断層とみられる破砕帯露頭が認められたほか,土岐市曽木町下(SN−9断層露頭)で美濃帯泥岩中に半固結した破砕帯露頭が認められた。

(a)SN−9断層露頭(図3−1−3−17

SN−9断層露頭は土岐市曽木町下の肥田川河床に分布し,リニアメント分布とほぼ一致する。美濃帯泥岩中の破砕帯であり,破砕帯の幅は,3〜10cmでほとんど粘土化しておらず,封圧下で破砕された断層岩様の産状をなす。破砕帯中の剪断面の雁行パターンから右横ずれ断層運動により形成された破砕帯であると判断される。破砕帯の走向傾斜はN31E84SEで,猿投山北断層の方向性と調和的である。

(b)SN−18断層露頭(図3−1−3−18

SN−18断層露頭は土岐市蘭仙北方の林道小里線に花崗岩中の破砕帯として露出する。破砕幅は約2m(破砕度V)であり,破砕帯には幅1〜2cmの淡緑色粘土が挟在する。破砕帯の走向傾斜はN53E59NWである。周囲の林道に沿っては健岩が連続することから,本断層露頭が猿投山北断層の主断層であると判断される。