6−1−2 トレンチ調査

直線状チャネルC7の延長線上にあたる、林道脇のチャネルの屈曲部の側壁に厚い腐植土が分布しているのが確認された。その露頭の南東側には微高地(H5)がひろがり、H5微高地の北西側は湿地となりチャネルが屈曲していた。したがって、湿地と微高地の境界を断層が通ると判断してトレンチ掘削調査を実施した。

トレンチは断層と直交する方向に2本(No.1トレンチ、No.4トレンチ)、断層に平行な方向に2本(No.2トレンチ、No.3トレンチ)掘削した。その結果、No.1トレンチ、No.4トレンチの各両壁面、計4壁面で断層を確認できた。

トレンチ内の地層構成は大きく分けてA層〜F層までの6層に区分できた。すなわち、表土であるA層、土石流堆積物であるB層、浅いU字状をなす堆積物であるC層、断層の北西側に分布するD層、断層の南東側に分布するE層、断層帯の中の堆積物であるF層と、基盤岩ないしは基盤岩の破砕帯である。各層は、礫径、礫の含有量、基質の粘土やシルトの含有量による層相の違いにより、さらに数層に区分できる。D層、E層とも角礫が多く混入する砂礫主体層(D−a層、D−c層、E−c層、E−d層)と礫が点在するものの粘土質の基質が卓越する粘性土層(D−b層、E−b層、E−e層)から構成されている。

断層はトレンチ底から壁面半ばまではおおむね垂直ないしは南東へ高角度で傾斜しているが、壁面の途中で上方へ開くように分岐しているのが2壁面で認められた。

断層はおおむねD層とE層の境界をなしており、断層を挟んで北西側にはD層が、南東側にはE層と基盤岩あるいは基盤岩の破砕帯が分布する。E層はH5微高地およびその南西側の小微高地を主として構成しており、D層はH5微高地の北西側にひろがるごく緩傾斜の斜面を構成している。

断層近傍では、D層、E層ともに断層にむかって引きずられたように撓んでいるのが認められた。

C層下部は、D層とE層の境界を跨ぐように浅いU字状に分布しており、C層の最下部であるC−d層堆積後、断層のフラワーストラクチャーの影響により落ち込み撓んだ可能性が高い。

牧ヶ洞断層の最終活動時期を決定するために11試料で14C年代測定を実施した。その結果、C層は約6,800年前から堆積し始め,少なくとも1,500年前ぐらい前までは堆積が継続していたこと、D層は18,000年〜19,000年前の堆積物であることが判明した。断層帯をなすF層は、660年〜6,400年前の地層がモザイク状に分布しているが、おおむね5,400〜6,400年前程度の堆積物と考えられる。