4−4−3 断層の活動時期

牧ヶ洞断層は、確実にD層、E層、F層を切っている。D層は年代測定の結果、おおむね18,000年〜19,000年前の堆積物である。F層は5,400〜6,400年前程度の堆積物と考えられる。したがって、断層は5,400年前以降活動したことは確実である(図4−6)。

C層は、約6,800年前から1,500年前まで継続した堆積物である。C層の内浅いU字状をなすC−d層およびC−c層は、断層と平行な北東−南西方向の延びを持つ分布をする可能性があること、浅いU字状の凹みは南西に向かって深くなる可能性が高いこと、C−d層およびC−c層による浅いU字状の堆積物はF1断層とF2断層の間の断層帯の直上に位置すること、下位のD層あるいはE層との境界にはチャネルを示唆するような削り込みが認められないことなど特徴がある。このような堆積状態からみて、C−d層は堆積後に断層が上方へ向かって開くフラワーストラクチャーのような構造の影響により落ち込み撓んだと考えられる。その後、C−c層がわん曲したC−d層の凹みに堆積したと考えられる。また、C−d層の最下部は断層変位による変形を受けている。C−d層は6,700〜7,000年前の堆積物であるあるので、断層が5,400年前以降活動したことと矛盾しない。

今回の調査では、断層を確実に覆い、なおかつ断層変位を受けていない地層を確定することができなかったため、最終活動時期の上限を確定することはできなかった。

仮に、C−b層の屈曲や不自然な端末が断層変位の影響を受けたものとするならば、約2,900年前以降1,500年前以前に最新活動があったことになる(図4−6)。

断層帯であるF層の構造の複雑さからみて、5,400年前以降ただ1回の断層活動で形成されたとは考え難く、さらに新しい活動があった可能性は否定できない。

また、断層の北西側にのみD層が分布することからみて、D層堆積後、F層堆積前に少なくとも1回は断層活動があった可能性が高い(図4−6)。さらにE層堆積後、D層堆積以前にも少なくとも1回は断層活動があったと考えられる(図4−6)。

図4−6 断層活動時期検討図