4−4−1 断層の性状

No.1トレンチではF1断層、No.4トレンチではF4、F5断層を挟んで北西側には主としてD層が、南東側にはE層と基盤岩の破砕帯が分布する。断層の南東側には基盤岩あるいは基盤岩の破砕帯が認められ、北西側には認められないことから、断層の南東側が相対的に隆起しているのは確実である。

また、E層上部はロームあるいはローム質な堆積物となっており、北西側にはそれらが認められないことから、南東側は早い時期に離水したと考えられる。また、E層はD層に比べて相対的に締まっていることからも、E層がD層より古いことを支持する。

断層を介して堆積時期の古いE層が相対的に新しいD層と接していることも、断層の南東側が北西側に対して相対的に隆起していることを示している。トレンチ内で認められた断層は、地形的に認められた牧ヶ洞断層の南東側隆起の性質と一致する。

断層は、トレンチ底から壁面半ばまではではおおむね垂直〜南東へ高角度で傾斜している(F1断層、F4断層)が、壁面の途中で上方へ開くように分岐しているのがNo.4トレンチの2壁面で認められた(F5断層、F6断層)。また、断層近傍では、断層の北西側に分布するD層も、南東側に分布するE層も、ともに断層にむかって引きずられたように撓んでいる。

これらの構造と変形は、横ずれ断層の断層変位にともなう特徴的なものであり、地形的に認められた牧ヶ洞断層が右横ずれの成分を有することと調和的である。

したがって、No.1トレンチ、No.4トレンチの壁面に出現した断層は、牧ヶ洞断層である。

図4−5において、赤い帯状に延びるF1断層からF4断層へと続く基盤岩の破砕帯を切る断層の走向はN46°Eで、牧ヶ洞断層の全体の走向と調和的である。その西側へ分岐して張り出す青い帯状に延びるF5断層は、断層南東側のH5の微高地の裾に平行に延びている。青い帯状の中に入る断層帯最上部の地層であるF−d層、F−e層、F−j層は、地形と平行に北西に緩やかに傾斜している。