(6)F層

No.4トレンチのSW面、NE面では、壁面の中央部より上方にD層とE層の境界に上に向かって広がるくさび状の堆積物が挟まれているのが認められた。この上に開いたくさび状内の堆積物は、SW面、NE面とも、壁面で観察されるどの地層とも対比できない。したがって、F層として一括して扱う。これらの堆積物を、礫の含有率、粘土の含有量、色調などの層相の特徴に基づき10区分した。それら10区分された地層はブロック状に分布しており、モザイク状の配置をしているので、地層の上下関係は不明である。したがってF−a〜F−jの地層の名称は、F層に限って堆積順序を表わさないで用いている。 ・F−a層:腐植土(写真4−8

No.4トレンチSW面にのみ分布する。黒色を呈し、非常に柔らかい。D層との境界でD−a層、一部D−b層と接する。強腐植土のため上下の層との境界は明瞭である。薄層状を呈し、全体としてごく緩やかに南東に傾斜している。

・F−b層:腐植質粘土混じり砂礫(写真4−8写真4−9

No.4トレンチSW面および同NE面でみられる。基質は腐植分を帯びた粘土で、やや柔らかい。礫径1〜2.5cmの小角礫が主体である。礫の含有率が高いのと、色調がやや緑色を帯びた茶灰色を呈するのが特徴で、他の層と区分できる。周囲の層との境界はやや不明瞭である。NE面では、くさび状のF層中の2カ所で認められる。

・F−c層:角礫混じり粘土(写真4−8写真4−9

No.4トレンチSW面および同NE面でみられる。非常に柔らかく、粘性が高い。暗灰色粘土と灰白色粘土が複雑に混じっており、練り返したような粘土であることが特徴で、他の層と区分できる。小角礫が点在する。周囲の層との境界はやや不明瞭である。

・F−d層:腐植土(写真4−8

No.4トレンチSW面にのみ分布する。黒色を呈し、非常に柔らかい。材を挟在する。強腐植土のため上下の層との境界は明瞭であるが、上位の強腐植土である表土のA−a層と接する部分は区分が困難である。薄層状を呈し、見かけ上、上位のF−e層とともに現地表面に平行に、ごく緩やかに北西に傾斜している。

・F−e層:シルト(写真4−8

No.4トレンチSW面にのみ分布する。非常に柔らかい淡褐色のシルトである。くさび状の堆積物の最上位に位置し、地表をなすA−a層に覆われている。見かけ上下位のF−d層とともに現地表面に平行に緩やかに北西に傾斜している。見かけはNE面のF−j層と非常によく似ているが、F−e層の方が柔らかい。

・F−f層:微細砂質粘土(写真4−9

No.4トレンチNE面にのみ分布する。基盤岩の破砕帯とF層との境界に接し、北西側のF層中に分布する。白色〜灰白色を呈し、やや固い。見かけは基盤の破砕帯の粘土が白色化したものと似るが、基盤岩の破砕帯に比べ粘性が低く砂質である。

・F−g層:ローム質腐植質粘土混じり細砂〜中砂(写真4−9

No.4トレンチNE面にのみ分布する。腐植質粘土混じり細砂〜中砂で、小角礫が点在する。基盤岩の破砕帯とF層との境界の上方延長において、E−a層と接している。地形的高まりに分布しているローム質のE−a層が小礫状に砕けてF−g層に落ち込み、混然となっており、E層とF層の境界は不明瞭である。暗褐灰色を呈する。

・F−h層:礫混じり細砂質シルト(写真4−9

No.4トレンチNE面にのみ分布する。灰白色を呈する。F−b層、F−c層、F−g層、F−i層の間を埋めるように引き延ばされたような形状で、全体として上に凸にわん曲しながら分布する。各層との境界はやや明瞭である。

・F−i層:腐植質粘土(写真4−9

No.4トレンチNE面にのみ分布する。中腐植質粘土で、黒褐色を呈する。非常に固く、均質であることが特徴である。F−g層、F−h層との境界は比較的明瞭である。

・F−j層:シルト(写真4−9

No.4トレンチNE面にのみ分布する。やや固い淡褐色のシルトで、くさび状の堆積物の最上位に位置し、地表をなすA−a層に覆われている。現地表面と平行に緩やかに北西に傾斜している。見かけはSW面のF−e層と非常によく似ているが、F−j層の方が固い。