(5)E層:ローム、粘土混じり砂礫、角礫混じり粘土

No.1トレンチ、No.4トレンチの南東側およびNo.2トレンチに分布する。主としてA層に覆われるが、No.1トレンチではC層に覆われる。上位のA層、C層とは腐植の有無、色調の違いから区分した。北西側に分布するD層に比べて相対的に締まっている。

ローム主体層、砂礫あるいは角礫からなる砂礫主体層、礫混じりシルトあるいは細砂混じり粘土からなる粘性土主体層で構成される。ロームの含有量、礫の含有率、基質の粘土の含有量による層相の違いから大きく5区分できる。上位から順に、ローム質なE−a層、角礫混じりの粘性土主体のE−b層、角礫主体のE−c層、シルト混じり細砂主体のE−d層、細砂混じり粘土のE−e層である。

・E−a層:角礫混じりローム

No.4トレンチSW面のグリッド1.4〜3.7の上部1/3、同NE面のグリッド1.0(SE端)〜4.2での上部1/3のいずれもD層との境界より南東側に分布する。No.2トレンチSE面の上半部と同NW面の上部1/3にも分布する。A層に覆われ、基盤岩もしくはE−b層を覆っている。上位のA層との境界の区分は腐植の有無、色調の違いに、下位のE−b層との境界はロームの含有量の違いに基づいている。No.4トレンチNE面、No.2トレンチNW面での境界は比較的明瞭であるが、同SE面では一部は指交しており不明瞭である。No.4トレンチSW面では、基盤岩を直接E−a層が覆っている。

全体にローム質であることが特徴で、黄褐色〜淡黄褐色を呈する。礫径1〜2cmの小角礫が混入しており、特に基盤岩直上で多く混入する。

・E−b層:角礫混じりの粘土〜シルトあるいは粘土混じり〜シルト混じり砂

No.1トレンチSW面のグリッド0.8〜6.3では壁面の中央部1/2、同NE面のグリッド0.9(SE面)〜6.3では壁面の上部1/3、No.4トレンチSW面のグリッド1.2〜3.6では壁面の中央部のいずれもD層との境界より南東側に分布する。No.2トレンチSE面の中央〜南西端の下半部、同NW面の中央部の中央部の大部分にも分布する。C−b層、C−d層もしくはE−a層に覆われ、E−c層、一部E−d層、E−e層を覆っている。境界の区分は、上位のC−b層との境界では固結度の違い、礫の含有率および色調の違いに、C−d層との境界では腐植の有無および色調の違いに基づいており、明瞭である。E−a層との境界ではロームの有無に基づいているが、前述したようにNo.3トレンチSE面を除いて比較的明瞭である。No.1トレンチにおける下位のE−c層、E−d層との境界では礫の含有率、基質の砂、粘土の含有量の違いに基づいているが、一部は指交関係のようにみえ不明瞭である。No.2トレンチにおけるE−e層との境界では礫の含有率、粘土の含有量の違いに基づいており、明瞭である。

基質は粘土〜シルト〜シルト質砂で、粘性土が主体であることが特徴である。

No.1トレンチの壁面では、礫径2〜6cmの亜角礫〜角礫が混入するシルト質砂が主体である。SW面においてD層との境界に接している巨礫は礫径80cmで長軸方向が立っている。基質のシルト質砂は部分的に細砂〜粗砂まで変化する。粘土の薄層を挟み、礫が少ない部分では粘土〜シルト混じり粘土が主体となる。礫は堆積面上に並んでおり、覆瓦構造が認められる。基質の変化が激しいこと、礫が並んでいることから、土石流堆積物が重なって形成されたと考えられる。部分的に腐植分を帯び弱〜中腐植質となっている。

No.4トレンチのSW面では、礫径1〜4cmの小亜角礫が点在する粘土主体層である。礫は下面近くに多く、堆積面上に並ぶ傾向が認められる。腐り礫が比較的多い。D層との境界近傍のグリッド1.3〜3.4の下半分は腐植分を多く含み、中腐植質となっている。

No.2トレンチでは、礫は堆積面上に並んでおり、覆瓦構造が認められる。礫の配列構造から土石流堆積物が重なって形成されたと考えられる。全般にNo.4トレンチに比べて粗粒で、No.1トレンチの層相に似ている。ローム分は上部ほど多く、下部ではほとんど含まれない。礫が少ない部分では粘土〜シルト混じり粘土主体の層となる。

全般に灰色〜明灰色を呈し、腐植分を多く含むところは暗灰色を呈するが、酸化により黄褐色〜淡灰黄色〜黄白色を呈する部分が多い。

・E−c層:角礫

No.1トレンチSW面のグリッド1.0〜5.8の下部1/3、 同NE面のグリッド1.0〜4.0の下部1/3のいずれもD層との境界より南東側に分布する。No.2トレンチSE面の南西端の最下部にもわずかに分布する。E−b層に覆われ、E−d層あるいは直接基盤岩の破砕帯を覆っている。前述したように上下のE−b層、E−d層との境界の区分は礫の含有率、基質の砂、粘土の含有量の違いに基づいているが、一部を除いて不明瞭である。

No.1トレンチ、No.2トレンチともに、基質は粘土混じり〜シルト混じりの細砂で、礫径2〜8cmの亜角礫〜角礫の礫が主体であることが特徴である。礫の含有率は各トレンチの壁面によって多少異なるが、礫の含有率はかなり高い。礫は堆積面上に並んでおり、覆瓦構造が認められる。礫が多い部分は基質も砂分が多くなる。腐り礫がかなり多い。色調は灰色を呈するが酸化により黄褐色化しているところが多い。

・E−d層:礫混じりシルト混じり細砂

No.1トレンチNE面のグリッド1.2〜6.0の下部1/3のD層との境界部より南東側にのみ分布し、境界部では壁面半ばまで分布する。主としてE−c層、一部E−b層に覆われ、基盤岩の破砕帯を覆う。前述したように上位のE−c層との境界の区分は礫の含有率、基質の砂、粘土の含有量の違いに基づいているが、一部を除いて不明瞭である。

基質はシルト質〜シルト混じり細砂で、細砂が主体であることが特徴である。基質中に亜角礫〜角礫が点在する。礫径は2〜8cmで、礫は堆積面上に並んでおり、覆瓦構造が認められる。礫が多い部分は基質も砂分が多くなる。色調は灰色を呈するが一部は酸化により黄褐色化している。NE面のグリッド5〜6にかけては腐植分を帯び、弱〜中腐植質となり、暗灰色を呈する。

・E−e層:細砂混じり粘土

No.4トレンチSW面のグリッド1.2〜1.6の最下部およびNo.2トレンチNW面の北東端〜中央までの下部1/3に分布する。E−b層に覆われ、基盤岩の破砕帯を覆う。上位のE−b層との境界の区分は礫の含有率、砂の含有量の違いに基づいており、比較的明瞭である。

基質は細砂混じり粘土で、粘土主体層であるのが特徴である。角礫はわずかしか含まれず、礫径は1〜2cmと小さい。腐り礫が多い。黄褐色〜黄白色を呈する。