4−1 トレンチ調査地点の選定

地表踏査時に、直線状チャネルC7の延長線上にあたる林道脇チャネルの側壁で、周囲の地層構成とは明らかに異なる厚い腐植土が分布するのが確認された(写真3−2)。この腐植土は、断層変位によって小さな沢の下流側(南東側)が隆起したために、上流側(北西側)が湿地状態になり形成されたと推定された。したがって断層の北西側には、断層イベントを記録している地層が連続的に堆積している可能性が高いと考えた。

厚い腐植土が分布するのが確認された露頭の南東側には、やや低いながら地形的な高まり(H5)がみられる(写真3−3付図3)。断層はこの高まりと腐植土の露頭との間を通ると考えられることと、小さな沢が右横ずれ屈曲していることから、断層の位置がかなりの精度で特定できた。

南東側の地形的な高まりは、早い時期に離水したと考えられ、腐植土に比べて相対的に古い地層で構成されていると推定される。そのため、最新の断層イベントの時期だけでなく、より古い断層イベントの時期を確定できる可能性も高いと考えた。

以上の点から、厚い腐植土が分布するのが確認された露頭の北東側に広がる湿地から南東側の地形的な高まりにかけてを、トレンチ調査地点として選定した。

また、腐植土の露頭へは、林道夏厩・大倉線からT字型に北西の山側に入る林道が延びており、重機の搬入が容易であることも、トレンチ調査地点としてこの地点を選定した理由の一つである。