5−7−5 今後の課題

江名子断層の高山市滝町付近より塩屋町南にかけての区間では,右ずれを示す断層変位地形が非常に明瞭であることより,断層が確実に存在しているものと見られる。断層の累積変位量は河谷・尾根の屈曲量から推定すると滝町付近で右ずれ約100m,また塩屋町南では約150〜200mに達している。

想定される断層線上でトレンチ掘削を行った場合,断層はほぼ確実に出現するものと考えられる。しかし(数万年よりも)古い地層については何度も繰り返し断層変位を受けている可能性がある。ここで重複した断層変位を活動履歴毎に正確に分離することは一般に困難である。また断層変位の基準となるものが存在しない可能性も高く,単位変位量の把握についても困難であると見られる。したがって,この地区におけるトレンチ調査は,活動履歴や単位変位量を求めるためには必ずしも有効な方法ではない。

滝町付近と塩屋町南部の地形地質状況を想定した場合,新しい堆積物の分布状況の把握するとともに,横ずれ変位の基準となりうる可能性のある谷壁や段丘崖などの斜面に着目し,断層の詳細位置や累積変位量の把握が必用である。

断層推定位置あるいはその近傍に(数万年よりも)新しい地層が分布する場合,小規模なトレンチあるいはピットを複数掘削し,活動履歴,特に最終活動時期に関するより多くの情報を収集することが有効であると考えられる。