5−1 栃窪南ピット(TS−1)調査結果

栃窪南の真野川右岸においては,鈴木・小荒井(1990)等により,断層が段丘堆積物に変位を与えていることが確認されている。しかし,同露頭は,現在,護岸工事により直接観察することができない。このため,真野川右岸に分布するL2 面上の断層延長位置において,東西約2.5m×南北約2m×深さ2mのピットを掘削した(図5−2)。本ピットの法面スケッチを図5−3図5−4図5−5に示す。

本ピットには,下位より礫層,礫混じり褐色砂質シルト層及びそれを覆う土壌が分布しており,礫層は,下位のマトリックスが砂質で砂層の薄層を挟在する礫層及び上位のマトリックスが泥質でやや腐植質な礫層からなる(図5−3)。

本ピットの西半部では,礫層及び礫層中に挟在する砂層の薄層は撓み状に東方に最大約20°の傾斜を示し(図5−5),ピット中央部の断層推定位置において,礫層の上面に,南側法面では約70cm(図5−4),北側法面では約1.3m(図5−5)のいずれも東側が低い鉛直高度差が認められる。

礫層を覆う土壌は,下位より黒色土壌「α」,褐色土壌「a」,黒色土壌「β」及び褐色土壌「b」からなる(図5−3)。

最下位の黒色土壌「α」は礫層の低下側のみに分布しており(図5−3),北側法面では礫層を覆う礫混じり褐色砂質シルト層及びその上位の黒色土壌「α」はいずれも礫層の上面と調和的に撓み状の形態を示す(図5−5)。また,南側法面では黒色土壌「α」が礫層中に落ち込んだ分布を示す(図5−4)。これらのことから,黒色土壌「α」は断層による変位を受けている可能性が高い。

しかし,黒色土壌「α」より上位の褐色土壌「a」,黒色土壌「β」及び褐色土壌「b」は,本ピット内において連続良く分布し,変位・変形は認められず(図5−3図5−4図5−5),褐色土壌「a」以上の各層と黒色土壌「α」以下の地層とには顕著な構造差が認められる。

したがって,黒色土壌「α」と褐色土壌「a」との間に断層活動があったものと判断でき,褐色土壌「a」には変位・変形が認められないことから,この活動が最新活動となる。

また,本ピットの北側法面において採取した黒色土壌の14C年代測定結果によると,黒色土壌「α」が2410±80y.B.P.の値を,黒色土壌「β」が1030±80y.B.P.の値を示す(図5−5)。

以上のことから,本地点における双葉断層の最新活動時期は,約2500y.B.P.以降で約1000y.B.P.以前である可能性が高いことが明らかとなった。平成9年度調査においては,この最新活動の年代をさらに限定することを目的として,褐色土壌「a」等の年代に関するデータを増やす必要があるものと考えられる。