4−6 鹿島町橲原地区

空中写真判読結果によると, 上真野川左岸においてL2 面上及びL3 面上に低崖が認められる(図4−27)。

地表踏査結果によると,空中写真により判読されたこれらの低崖は,いずれも断層の位置と対応していることから,低断層崖である可能性が高い(図4−28)。

上真野川左岸におけるL3 面上の低崖の地形測量結果から求めた鉛直変位量は約80cm〜約60cmである(図4−29図4−30)。本地点では, 原地形の保存が良いと考えられ,低下側の表層部にはより新しい堆積物が分布することも期待されることから, 双葉断層の最新活動年代を特定できる可能性がある(平成9年度調査候補地点8)。

上真野川右岸においては, 西側の中新統の塩手層と東側の上部ジュラ系〜下部白亜系の相馬中村層群とを境する断層が確認され, 断層は段丘堆積物基底面に鉛直約1.3m東落ちの変位を与えている(図4−31)。鈴木・小荒井(1989)はこの段丘堆積物基底面の鉛直変位量は双葉断層の最新活動における1回当たりの変位量としているものの,堆積物の上面での鉛直変位量は約70cmであることから, 堆積物基底面の鉛直変位量は2回の活動による累積である可能性もある(図4−32)。

上真野川右岸の断層露頭の南側には, 小規模な支流が西流しており(図4−29),谷底面に変位地形は認められない(図4−33)。谷底面を形成する堆積物は木片を多く含む細粒堆積物からなり,この細粒堆積物基底部から採取した木片の14C年代測定を行った結果,160±60y.B.P.の値が得られた(図4−33)。この谷底面の北側には,L3 面が断層を横断して分布しており,同面も支流の堆積物で構成されているものと考えられことから,チャネル堆積物による横ずれ量の検討及び最新活動年代を特定できる可能性がある(平成9年度調査候補地点9)。