4−3 相馬町塩手山南地区

塩手山の東山麓から南にかけての山地内においては,双葉断層沿いのリニアメントとしては地形的に最も鮮明な区間であり,鞍部,三角末端面上の崖が連続的かつ直線状に連なり,尾根・水系の左屈曲も明瞭である(図4−12)。本地区の山地内においては,一本木地点,池上西方地点などにおいて,崖錐〜扇状地性の平坦面上に低崖が認められる(図4−12)。

一本木地点においては,小規模な崖錐〜扇状地性平坦面が認められ,同面上に低崖が認められる(図4−13)。地表踏査結果によると,この低崖は断層の位置に対応し,その北方約400mの地点では,崖錐堆積物に東落ちの変位を与える断層が確認される(図4−14)。したがって,この低崖は低断層崖の可能性が高く,低崖の地形測量結果から求めた鉛直変位量はは約3mである(図4−13)。鉛直変位量が比較的大きいことから, 本地点では複数回の断層の活動履歴が確認できる可能性がある(平成9年度調査候補地点3)。

池上西方地点においては,比較的広く扇状地性平坦面が分布し,それを開析する小谷も認められる(図4−15)。この扇状地性平坦面上には連続の良い低崖が認められ(図4−15),地表踏査結果によると,この低崖は断層の位置に対応しており,低断層崖である可能性が高く,低崖の地形測量結果から求めた鉛直変位量は約4m〜約5mである(図4−16)。鉛直変位量が大きいことから, 本地点では複数回の断層の活動履歴及び鉛直変位の平均変位速度が確認できる可能性がある。また,本地点の崖錐〜扇状地性平坦面は厚い堆積物からなるものと推定され,扇状地性平坦面を開析する小谷が認められることから,チャネル状の堆積物が期待され,横ずれ量を確認できる可能性もある(平成9年度調査候補地点4)。