4−12 大熊町野上地区

空中写真判読結果によると,双葉断層延長部の熊川右岸には,M2 面,L1 面及びL2 面が広く分布するが,いずれの段丘面上にもリニアメントは判読されない(図4−54)。

地表踏査結果によると,本地区付近において,双葉断層は西側の古第三系の白水層群石城層と東側の鮮新統富岡層との境界あるいは石城層内の認められ(図4−55図4−56)。断層面が比較的低角度の西上がり逆断層であり,断層面は明瞭で,面沿いに軟質な粘土を伴う(図4−57図4−58)。熊川の右岸では,この断層とは別に,その東側に性状の異なる断層が認められる(図4−59)。この断層も,西側の石城層と東側の富岡層とを境する西上がりの逆断層であるが,断層面近傍には石城層の角礫と富岡層とが混合した擾乱部が認められ,断層面及びその近傍の擾乱部は周囲の岩石と一体となって岩石化している。このことから,この断層の活動時期は,富岡層が半固結あるいは未固結時,すなわち富岡層堆積期と判断され,双葉断層の鮮新世における活動を示すものである。この断層は,南方の熊川右岸では,上記の軟質な破砕部を伴う断層に切られている(図4−57)。また,熊川左岸のの大熊町山神では,石城層と富岡層とは不整合関係で接している(図4−60)。

空中写真判読結果によると,熊川左岸の丘陵内にはLD リニアメントが判読され(図4−54),リニアメントの位置は西側の石城層と東側の富岡層との境界に対応しているが(図4−55図4−56),同境界には断層は認められず,上記のように,石城層と富岡層とは不整合関係で接していることが確認されている(図4−60)。したがって,リニアメントは,両側の岩石の岩質の差を反映した侵食地形と判断される。また,熊川左岸の双葉断層延長部では,M2 面,L1 面及びL2 面が広く分布するが,いずれの段丘面にも変位・変形は認められない(図4−61図4−62)。

これらのことから,本地区においては,少なくともM2 面形成期以降における双葉断層の活動はないものと判断される。