4−6−2 反射記録における地質構造解釈結果

解析の結果得られた深度断面図に対して、特徴的な反射波境界及び推定される断層について浅部の地質構造解釈を行った。

調査測線 Line−1 に沿って断面図を見ると、深度 50mから100m程度までの浅部(A面より上部)にはほぼ水平な堆積層が見られ、その速度は 2,000m/sより若干遅くなっている。その下位には褶曲を伴う構造が部分的には断層(F1)により切られる様子が比較的強い反射イベントとして見られ、そこまでの区間速度は凡そ 2,500m/sである。F1の断層の落差はイベントの食い違いから判断すると、10m内外と推定される。

 この様な強い反射は Loc.80より測線の北側では見えなくなる事から、Loc.80付近の直下に断層(F2)を想定する事が可能である。仮に北側のブロックが隆起して、その後に浅部の地層が削りとられたと考えるならば、この断層(F2)の落差は100mを超えるものと推定される。しかしながら、これらの断層はA面より上位にある地層を切っていない事から、活動時期は古く重要なものとは考えにくいといえる。

 測線の北側に位置する西根中学校付近において梨平層の露頭が観察されている事から、このA面より上部に梨平層の上面が存在し、A面自身は梨平層の下面に対応していると思われる。その下位には極めて強いが連続性は余り良くない傾斜した反射面が見える。この反射面の深度は測線の南端で100m(海抜)で測線中央部で凡そ500mに達する。この反射面の直下では、区間速度が南側で3、200m/s程度から中央部で3,500m/s程度まで変化している。

 この反射面より下位の1,200から1,300mの深部には向斜構造も見られる。傾斜した反射面から向斜構造にかけての区間速度は上部で3,500m/s程度で向斜の直上では4,000m/s程度に達する。この深部の反射波は、その深度から考えて音響基盤である花崗岩からの反射波と考えるのが妥当であろう。

調査測線 Line−2 に沿って断面図を見ると、深度100m程度までの浅部(A面より上部)に Line−1と同様の水平な堆積層を示す明瞭な反射波を認めることができる。但し、Loc.50〜100の間の極浅部のデータは車両ノイズの影響を受けたため、A面より上部の反射波はそこより北側や南側に比べ不明瞭になっている。ちなみに、その速度は2,000m/sより若干遅い程度である。

 A面より下位には僅かな褶曲をを伴う構造が強い反射波として見られるが、Loc.50〜100の間では浅部程ノイズの影響を受けていないにも拘わらず、同種の反射波を認める事はできない。しかしながら、この区間の深度100〜200mの所には傾斜した切れ切れの反射波を観察する事ができる他、この反射波群は Line−1の中でA面より下位でかつF2より北側に見られた反射波群と類似している。深度約300mまでの区間速度は、点線で示す様にLoc.100付近と50付近では南から北に速くなるように変化している。

 トンネル掘削に先立って実施された地表地質調査とボーリングの結果によれば、トンネルの上部に梨平層相当層が確認されているのに加え、トンネルを横切ってそれより上位の地層に達する様な断層は発見されていない。従って、Loc.50とLoc.100付近の直下にも断層(F4とF3)を想定することが可能である。仮にこの区間のブロックが隆起して、その後に浅部の地層が削りとられたと考えるならば、これらの断層(F3とF4)の落差は100mを超えるものと推定される。しかしながら、これらの断層はA面より上位にある地層を切っていない様であり、活動時期は古く重要なものではないであろう。また、想定される断層様式は北落ちの正断層となり、この地域における活断層系の活動様式とは全く異なるものとる。従って、この測線において想定された断層は活断層と関係しているものとは考えにくい。

 トンネルの北側と南側では梨平層の露頭が観察されている事から、この測線においてもA面より上の浅部に梨平層の上面が存在しているものと思われる。この測線では、Line−1とは対照的に深度300mより下位には基盤からの反射波を含め顕著な反射波を観察する事ができない。

以上をまとめると、今回の浅層反射法弾性波探査により二つの測線のそれぞれに落差を有する断層が想定することが可能であるが、それら断層の活動時期は古いものと考えられる為、活断層とは直接関係しているものではないと思われる。