3−5 地形地質調査まとめ

1)北部の桑折断層系および藤田東断層、泉田断層、越河断層では、最も東側の藤田東断層で比較的新しい活動が地形条件から推察される以外、断層に関する新たな知見は得られなかった。ただし、藤田東断層ではは、断層付近において中新世の地層が急傾斜していると同時に、藤田東断層は中新世もしくは鮮新世の地層と第四紀の堆積物との地層境界となっていることがいくつかの地点で確認された。この地質条件は桑折断層系でも同様である。

2)国見町森山地域では赤川層の軽石質凝灰岩と段丘堆積物の分布から藤田東断層の位置ある程度限定することができた。この地域では形成時代のことなる段丘面が断層を横断する形で分布しており、トレンチ試掘やピット調査によって最新活動時期や平均変位速度などについて明らかにすることが可能と考えられる。

3)桑折町から福島市東湯野にかけての地域でも地質の露出は少なく今後の調査(トレンチ調査等)によって明らかにされるべき点が多いものと考えられる。桑折町万正寺地区や睦合地区などでは断層は比較的狭い範囲で並列するか、1条の断層線として扱われる可能性が高く、トレンチ調査によって桑折断層系を代表する最終活動時期や活動間隔が限定される可能性は高い。

4)台山断層と桑折断層系が連続する可能性についての検討では、桑折断層系の更新世後期における活動が、変位地形の状況から西に連続するのではなく南に連続する可能性が高いと考えられる。また、台山断層の北部延長は更新世前期の地層である高田層の分布とその構造から、飯坂市街地の南を東西に連続するのではなく、飯坂中野付近から飯坂町寺畑付近に連続する可能性が高い。従って、地質踏査の結果からは台山断層と桑折断層は不連続である可能性が高いと判断した。

5)台山断層では、大笹生付近でLV面を変位させる断層面が確認されたことから、完新世における断層活動があった可能性が高く、変位量は約5.5m程度と見積もられる。しかし、変位の確認された断層面の延長ではM面の総変位量が30m程度で、この地域の一般的な平均変位速度に対して小規模である。この地域では断層は2条に分岐するものと考えられるため、西側の最終活動時期を限定すると同時に前縁部の活動性や最終活動時期を求めることが必要である。

この地域では、断層付近で更新世前期とされる高田層に30〜60°の急傾斜や変形が見られる。この傾向は南部の天戸川付近まで確認することができる。

6)最南部に位置する白津断層では、白津付近でLV段丘の堆積物に1m程度の変位が認められる。したがってこの地域でも完新世にはいってからの断層活動の可能性は高く、段丘の変位からより新しい活動の可能性も考えられる。

7)地域全体では、活断層が連続する地域では中新世の地層や更新世前期の高田層が急傾斜を示す傾向が認められた。中新世の地層の急傾斜は断層に近接する地域でも認められ、活断層との直接の関係は不明であるが、高田層の急傾斜や変形は第四紀においてこの地域の断層が継続して活動を続けたことを示すものである。

地質踏査の結果から南部の地域では新期の活動に関する資料も得られたが、最も新しい断層活動を確定するに至っておらず、活動間隔についての検討はトレンチ調査を行なうことが必要となる。