(5)庭坂地域調査結果

この地域では活断層沿いの新知見は得られなかったが、変位地形の存在が明瞭であり、その位置が地形形状から絞り込むことが可能であるため、台山断層の活動性を明らかにするためには最も重要な地域である。

断層による変位地形であることが明瞭なものは、松川左岸のLU面と庭坂地区の火砕流堆積面である。松川左岸のLU面には約1kmにわたって比高10〜15mの直線的な崖地形が連続する。火砕流堆積面の分布域ではやや湾曲した崖地形があり、この比高は50〜60mである。

この地域では、断層の西側には天王寺層の凝灰岩、凝灰質泥岩が30〜50°の西傾斜で連続している。これより西側には梨平層相当層が分布する。松川右岸の山地には花崗岩が分布し一部で平野との境界付近まで連続している。

山地と平野の境界付近には部分的に更新世前期の堆積物とされる高田層が見られる。高田層は炭化物を多量に含むシルト〜泥層、円礫優勢な砂礫層・細粒凝灰岩および砂質凝灰岩の不規則互層からなる堆積物である。この分布をみると、台山断層よりも西側にも分布している。れは、飯坂−中野付近、大笹生付近の高田層の分布(図3−26)も同様であり、台山断層の活動が更新世前期には堆積物の分布範囲を規定することがなかった可能性がある。

松川沿いのIw167〜172では高田層がほぼ直立する変形を受けて梨平層相当層と断層によって接しているが、断層の走向はほぼ南北であり、地層の走向は下流側で東西走向、南傾斜であったものが断層に近づくに従い南北走向・東傾斜となる。この地層の変形は台山断層に沿った高田層の変形と様式が異なる可能性が高い。

この地域のLU面は扇状地性の堆積物からなるため、松川沿いの露頭では1mを超える礫を多量に含む砂礫層が見られるのに対し、右岸の原際付近に見られる堆積物は粗粒砂の薄層を含む互層状となっている。

火砕流堆積物には5mを超える角礫を含む凝灰角礫岩で構成されるが平坦部や凹部ではローム質シルトに覆われこの上位には約1mの黒色土壌が見られる(Iw190)。Iw181では火砕流堆積物を浸食した層厚約2mの亜円礫層が認められた。この堆積物は分布高度からLT面に連続するものと思われる。