(4)松原−飯坂地域調査結果

この地域では、桑折断層の南もしくは西への連続が調査の重要課題であるが、地質踏査によって、これを判定でき得るだけの根拠は見いだせなかった。ただし、地形形状から判断するならば、空中写真の判読によって示した県道飯坂・桑折線沿いのリニアメントは、ほとんどが梨平層とLU面の境界をなすものであり、いくつかの地点でこのリニアメントの延長上を横断するLU面には、段差や傾斜変換部は見られない。

この地域において残丘状の丘陵地を構成する梨平層は東〜北に向かって20〜40°の傾斜を示しており、既存文献に示されリニアメントに対応して地層が急傾斜を示すことは確認されていない。このことから、このリニアメントの成因は、桑折断層によって形成された断層変位によるリニアメントとは異なる可能性が考えられ、少なくとも更新世後期の活動は活発ではなかったと思われる。

飯坂町湯野付近に分布するM面およびLT面は既存文献の示す通り、北に向かって逆傾斜を示し、M面がより急傾斜となっている。しかし、北原から西根神社に連続するLV面や半沢畑から西竹に連続するLU面にはこれに対応する逆傾斜は観察されない。

これに対して、桑折町松原から福島市前屋敷には現地においても撓曲崖と考えられる地形が存在する(図3−22精査地質図、福島市東湯野地区)。ここではLT面に幅150mの間に15m以上高度差があり、LU面では5mの高度差が認められる。このことから、更新世後期に限れば断層の活動は南北に連続する可能性が高いと判断し、この地域において精査を実施した。

桑折断層と台山断層が連続する可能性を検討する上では、この地域と共に台山断層の北部延長の想定される飯坂−中野地域の地質状況が重要であることから、この地域についてはやや広域に精査を実施しこの結果を図3−23に精査地区地質図(縮尺1/10,000)として示した。