(2)桑折−飯坂地域の判読結果

・地形特性

この地域では摺上川および阿武隈川左岸に段丘の発達が見られるが、分布の幅・連続性は北部地域に比較すると悪い。

これに対し、摺上川および小川の右岸には連続の良い段丘面が発達している。山地の周辺部に分布する段丘面ではLU面の連続が最も良いが桑折町成田から松原にかけての地域には比較的連続のよいLT面が分布している。

飯坂周辺にはLT面、中位段丘面(M面)がいずれも残丘状の地形となって分布しており平坦面の保存は良くない。飯坂の西側から中野に地域では丘陵頂部に中位段丘面や高位段丘面(H面)が断片的に分布しているが、いずれも連続性に乏しく平坦面の保存は良くない。

飯坂の南を流れる小川および摺上川の両岸には低位段丘面の発達がよく、沖積段丘も比較的分布が広い。また、飯坂市街地ではLV面や沖積段丘にも低い段丘崖が見られ離水時期の異なる可能性がある。北側の山地斜面には中〜小規模な地滑り地が多数観察される。

・変位地形

この地域で活断層による変位地形であることが考えられるリニアメントは、桑折町桐窪から福島市東湯野にかけて山地および丘陵地と低位段丘面分布域の境界付近に連続するものが最も明瞭である。これは福島盆地西縁断層帯のうち日本の活断層(1991)による桑折断層に対応する。

このリニアメントは丘陵部と段丘の境界となっているが、前面にはLT面−LU面境界を形成する部分や、LU面を変位させた低崖、橈曲崖なども見られる。この部分についてはAないしBランクと評価した。このリニアメントは桑折町桐窪から万正寺の区間では比較的直線状であるが、これより南では東に向かって凸型のリニアメントとして観察さる。

南端部の松原から東湯野にかけての地域では、ほぼ南北にLT面およびLU面が橈曲していることが観察される。この変位には段丘の古いものほど大きな変形を受けた形状を示し、断層変位の累積性を示すものと考えられる。

上記リニアメントの南端部から飯坂付近には日本の活断層(1991)により北落ちと南落ちの平行した確実度Tのリニアメントが示されている。また、渡辺(1985)では南落ちの断層(湯野断層系)が示され、新屋(1984)には北落ちのリニアメントが示されている。本調査では飯坂付近の薬師山から中愛宕にかけて中位面ならびにLT面が系統的に北に向かって傾斜していることを確認したが、上記報告に示されたリニアメントについては、連続性に乏しいこと、変位地形とされるものがいずれも丘陵地と段丘の境界に位置し、低位の段丘がこの丘陵を取り巻く様に分布することが見られることから新しい時代の断層活動を反映した地形である可能性は低いと判断した。

これとは別に桑折町松原から福島市平林付近、飯坂市街地などに不連続なリニアメントが観察される。これらのリニアメントは、福島盆地西縁断層帯のうち北部に連続する桑折断層系と南部に連続する台山断層(日本の活断層,1991)が一連の活断層である可能性について検討するために重要なものである。活断層による変位地形としては連続性、明瞭さに欠けるものであると判断しCランクとした。

・地表踏査の重要点

この地域では桑折断層の正確な位置や最終活動時期、段丘面の形成時期とこの変位量、連続について十分な検討を行なう必要がある。特に、この地域では断層の活動が1つのリニアメントで代表される可能性が高いため、この地域で得られる断層の活動性や累積変位量が北部地域の断層系における代表値と成り得る。

飯坂付近では、桑折断層と南の台山断層との連続についての調査が重要な調査項目となる。地表踏査では、既存文献や空中写真の判読で得られたリニアメントについてだけでなく、周辺の地質状況、地質構造についての調査が必要であると同時に、断層が連続する可能性がある地域を横断する地質情報が必要となる。