3−3−1 栃窪南ピット(TS−1)調査結果

栃窪南の真野川右岸においては,鈴木・小荒井(1990)等により,断層が段丘堆積物に変位を与えていることが確認されている。しかし,同露頭は,現在,護岸工事により直接観察することができない。このため,真野川右岸に分布するL2 面上の断層延長位置においてを掘削した(図3−4)。本ピットの調査結果を図3−5に示す。

本ピットの西半部では,礫層及び礫層中に挟在する砂層の薄層は撓み状に東方に最大約20°の傾斜を示し,ピット中央部の断層推定位置において,礫層の上面に東側が低い鉛直高度差が認められる。礫層を覆う黒色土壌「α」も礫層の低下側のみに分布し,礫層上面と調和的に撓み状の形態を示すこと,一部で黒色土壌「α」が礫層中に落ち込んだ分布を示すことから,黒色土壌「α」は断層による変位を受けている可能性が高い。しかし,黒色土壌「α」より上位の褐色土壌「a」,黒色土壌「β」及び褐色土壌「b」は,本ピット内において連続良く分布し,変位・変形は認められず(図3−5),褐色土壌「a」以上の各層と黒色土壌「α」以下の地層とには顕著な構造差が認められる。これらのことから,黒色土壌「α」と褐色土壌「a」との間に断層活動があったものと判断でき,褐色土壌「a」には変位・変形が認められないことから,この活動が最新活動となる。

本ピットにおける14C年代測定結果によると,黒色土壌「α」が3040±60y.B.P.〜2210±60y.B.P.の値を,褐色土壌「a」が1930±60y.B.P.の値を,黒色土壌「β」が1200±70y.B.P.及び1030±80y.B.P.の値を示す(図3−5)。

以上のことから,本地点における双葉断層の最新活動時期は,約2200y.B.P.以降で約1900y.B.P.以前である可能性が高いことが明らかとなった。