(5)解析結果

解析に際し行ったデータ処理は表3−3−1に示した内容で行い、手順は図3−3−13に示した。解析結果として重合後時間断面図,マイグレーション後時間断面図,深度断面図,相対振幅強度+零位相表示深度断面図,地質構造検討図と位相表示による地質構造断面図を図3−3−14図3−3−15図3−3−16図3−3−17図3−3−18図3−3−19に示し、図3−3−20に地表解析結果を、図3−3−21に地質構造解釈図を示した。

 反射法探査によって明らかにされた地質構造では、この測線では更新世の地層をきる断層として評価されるものは図3−3−18に示したfa断層(CMP番号270付近で地表付近に到達)とfb断層(CMP番号140付近で地表付近に到達)が確認された。この断層を挟んでfa断層の北側にはやや連続の悪い反射面を現わす地層が分布している。この地層は反射断面でも地表から不連続を持たずに深度 200mまでは続くことから、中新世の梨平層の一部であり凝灰岩もしくは凝灰質泥岩と判断される。

この東側では深度100〜200m付近までに比較的反射面が明瞭での連続のよい地層(A層,B層)が堆積している。この下位には反射面の連続がやや不明瞭となるC,D層が深度約300m付近まで分布している。これらの地層はfa断層に接近する側でやや深く、fb断層に近付くほど、浅い位置に分布している。

fb断層の南側には深度150m付近までに、明瞭で連続のよい反射面を示す地層が堆積している。これらの反射面はNo.5孔のボーリング結果から砂礫層とシルト・砂層の互層を反映していることが明らかであり、ボーリング調査から得られた年代値から20m以深の地層は更新世中期の地層であると判断される。このことから、図3−3−21に示したA層上部が後期更新世の地層でありB層,C層が更新世前期〜中期の堆積物である可能性が考えられる。D層はfa断層北側に見られるE層(中新世)に対比されるか、あるいは鮮新世〜更新世前期の地層に対比されるかは明らかではないが、深度300m以深の地層とは大きく異なる地層と判断される。

地層対比から断層の変位量を検討すると、fa断層では中位段丘面の変位量が約60m程度であり、0.60〜0.75m/1,000年の平均変位速度を示す。B層基底(更新世の基底?)の変位量は200m以上を示すため長期間の平均変位速度はより大きな値になる可能性があるが、fa断層の地表付近では新しい時代の堆積物に明瞭な断層の連続が確認されないことや堆積物の変形が明瞭でないことから、更新世後期の活動・変位量については明確にはされていない。

これに対してfb断層では、明瞭な地層の変形が認められる。しかし、断面図に示したC層は断層を挟んで層厚の差がほとんどない。またB層も上盤側で上部がわずかに失層する分層厚が小さくなっているが、B層,C層の変形には層順ごとの差が見られず、この変形あるいはfb断層の活動が、B層堆積後に発生した可能性を示している。

反射断面で見る限り、fb断層付近の地層変形は150〜200m程度の幅をもっているが、この断層を挟んだ同一層の高度差はこの変形帯の中で収束しており、水平層自体の高度差はほとんど見られない。従って、fb断層付近の変形や断層活動は水平方向の圧縮によって生じたものと考えられる。また、断層の角度はfa断層の30°程度に対して極めて高角であり約70°を示す。深度 150m以深では断層面が低角化し、D層の基底に連続する可能性も考えられる。

fb断層の南側のA層中には火山灰の対比から約20万年前頃の砂礫層が深度40〜45m付近に見られ、中位段丘面(8〜10万年前)に対比される砂礫層が深度20m付近に分布することが明らかとなっている。反射面の対比と反射速度の検討から示した構造断面図の地層対比が正しいとすればfb断層の約20万年の変位量は40m,約8〜10万年間の変位量は20m程度であり、平均変位速度は0.2m/1,000年もしくは0.25〜0.2m/1,000年となる。

fb断層を挟む10万年もしくは20万年間の平均変位速度は断層全体の変位速度と比較すると1/4程度として現れるが、後述するボーリング・ピット調査の結果から得られるfb断層の平均変位速度0.5〜0.7m/1,000年よりも小さい。このことは、桑折断層系全体の平均変位速度が更新世後期のうち前半ではfa断層がより優勢に活動し後半から完新世にかけてはfb断層の活動がより優勢になったことが考えられる。