4−5−4 断層の活動イベント

大佐野地区のトレンチ結果から、各層の断層を挟んだ高度差をまとめると、図4−5−1表4−5−2のようになる。この結果を踏まえ、断層の変形の程度や層相を考慮して、断層の活動イベントについて検討する。表4−5−3及び図4−5−2に検討結果をまとめた。

当初は掘削面@における地層の変形程度、断層両側の高角度等の観察結果から、イベント層準は1/2A、2B/3(各々イベント1、2)にあると判断されたが、その後北側への追加掘削によって2B層の変形が2A層と異なっているように見える断面が出現し(掘削面A)、さらに2A/2B層準にイベントが追加される可能性が指摘された(イベント1’)。また、3層、4A層が断層東側で西側よりも厚いこと、4B層の厚さが断層付近で急激に薄くなることが、掘削面@、A、Bの観察から指摘され、この層準(3〜4A/4B)にもイベントがあった可能性が指摘された(イベント2’)。これをすべて考慮すると、最大4回の活動イベントが認定可能ということになるが、掘削面@〜Cのすべてにおいてほぼ確実に認定でき、また、地層毎の高度差変化から見て、明瞭なものはイベント1、2である。

イベント1’、2’についても可能性はあるが、イベント認定の標題について、地層の物性の差が変形様式の違いに表れたと見る見方や堆積時の初生的な層厚の差とみて、断層活動のイベントとみない解釈も可能である※1。また、後述のように再来周期の評価の上で問題が生じると思われている。よって、以下の考察ではイベント1、2を主として対象にするが、今後の研究、福岡市等の他機関による調査の進展によっては、イベント認定が追加される可能性は残っている。イベントを2回とみると、各イベントでの変位量は表4−5−2の結果から、次のようになる。

表4−5−2−1

ここで、前述のように変位量の成分比を上下:水平=1:2とすると、実変位でみた1回の変位量は70〜90p/1イベントとなる。

※1 イベントを4回とみると各イベントの変位量は、次のようになる。

イベント1 :2A上部下面の高度差から、35〜40p(上下方向、以下同じ)。

イベント1':2B上面の高度さと、2A上面の高度差の差から、0〜10p。

イベント2 :3上面の高度差と、2B上面の高度差の差から、0〜14p。

イベント2':花崗岩上面の高度差と、3上面の高度差の差から、8〜16p。

このように、イベント1以外の変位量は、かなり小さくなり、1回の変位量の評価も上下方向で10〜40p、実変位量換算で22〜90p/イベントと幅が大きくなる。

※測定点は図4−5−1に示した。矢印は、人為的削剥分を補正するもの(表4−5−2の注を参照)