(1)調査結果

1 地 形 調 査

調査地付近には沖積面が広がっており、変位地形は認められない。文献G及びCでは、周辺のボーリング資料に基づいて、図4−4−4−1−1図4−4−4−1−2に示す位置に断層が想定されており、今回調査でボーリング資料を再整理した結果でも、同様の位置に断層が想定された※。

   

2 ボーリング調査

ボーリング調査結果は柱状図及びコア写真として巻末資料に収めた。この結果をもとに作成した調査地付近の地質断面図を図4−4−4−2に示す。

・地 質 構 成

表4−4−4−1に警固地区の地質構成を示す。

今回実施したボーリングはいずれもGL.−10.0mまでで、各孔で確認された地層は下位より下山(1989)の住吉層、博多湾シルト層、箱崎砂層及び人工埋積土である。調査ボーリング最下部で見られる粘土、腐植物混り細粒砂及び2次マサ状の細礫混り粗粒砂層は、後述の博多湾シルト層の下位に位置することより、下山(1989)の住吉層に相当する物と考えられる。本層は一部で腐植物を挟む。

また、全体に淘汰が悪い。上位層とは、粘土・色調の違いから明瞭に境される。住吉層は下山(1989)によれば、氾濫原ないし三角洲の堆積物からなるとされており、非海成層である。住吉層の上位には、1.5m以下で暗灰色を呈す細礫及び粘土混りの細粒砂層が堆積している。ボーリングコアbQでは、ここでヒメシラトリガイ・ウミニナ・サルボウガイ等の潮間帯化石群が確認されている。さらにbRでは、この地層中でスナガニとアナジャコの単穴化石が確認され、潮汐堆積物であることも確認されている(いずれも下山委員の検討による)。これらの証拠拠から、この層は海成層と判断され、下山(1989)の博多湾シルト層に相当すると考えられる。これは6,000〜3,000年前の縄文海進期の堆積物とされており、当地区は従来この地層が分布すると想定されてきた範囲より、さらに内陸に入り込んでいる。このことからみて、本層の上限は最大海進期(約5,000年BP)に対応すると推定される。博多湾シルト層の上位には、主として石英粒子からなる細粒砂及び中〜粗粒砂が出現する。この層準は海浜砂層と考えられ、さらに、博多湾シルト層の上位に位置することから見て、下山(1989)の箱崎砂層に相当するものと思われる。地表から 2.0m前後までは、暗褐色を呈す人工埋積土ないし人工攪乱土である。

※ただし、調査地付近のボーリング資料の密度はやや粗く、推定精度はあまり高くない。今回理由できなかった国道202号線沿いのボーリング資料(NTT所有、未公開)によると、調査地付近の断層位置はこの想定位置より数10m西方のようである(下山委員の検討による)。

・地 質 構 造

調査で確認された住吉層(下部)、博多湾シルト層、箱崎砂層の各境界の傾斜は1〜2゜以下でほとんど水平である。特に、周辺の地下地質データから推定されている警固断層を挟む位置で行ったボーリングbRとbQの博多湾シルト層上限面の相対的な高度差は20pで、西側がわずかに高いにすぎない。両ボーリング地点間の距離が46mあることを考えると、博多湾シルト層が断層活動による変位を受けているとは考えにくい。