(2)まとめ

調査結果をもとに、本地域での警固断層についての知見をまとめる。

1 断層の位置

トレンチ掘削面の観察では、第四系を変位させている断層は、トレンチ中央やや東寄りのものだけである。周辺のボーリング結果から見ても第四系を変位させている断層は、他に存在しないと判断される。地形で認められる活撓曲の延長部に位置することから見ても、この断層が警固断層の最も活動度の高い部分に相当すると見てよいと思われる。

なお、前述のように大佐野中学校北側に見られる断層露頭から断層を延長すると、このトレンチの表層部に延びる。この点から見るとトレンチで見られた断層は、文献Eで示された「大利断層」の延長というよりも、さらに北側から延びてくる警固断層「本体」(文献Eでは春日断層)の延長部と見てよいと思われる。なお、電気探査(比抵抗映像方)の結果でも、断層の位置は比抵抗の横方向の変位位置にあたっており、このことから見て電気探査はおおまかに断層の所在を推定する上で有効と考えられる。

2 断層の確実度

今回のトレンチによって、警固断層が新しい時期にも活動した活断層であることが明らかになった。文献B、Cでは、警固断層は確実度T〜Uとされていたが、今回の結果からみて確実度Tと評価されるべきであろう。

3 断層の性状

トレンチで確認された活断層は傾斜40〜50゜の逆断層で、厚さ2〜10pの断層粘土を伴っている。この変位センスについてもすでに断層露頭についての文献での記述はあるものの、今回はあらためて明瞭に確認されたといえる。

なお、トレンチで確認された各地層の断層による変位量(70p以下)だけから見ると、断層粘土が厚すぎると思われるが、断層粘土自体が周囲の花崗岩とともに被覆層に影響している状況からみて、今回確認された30,000年BP以降の活動以前にも、粘土の形成を伴う断層活動があったと判断される。

4 断層活動のパラメーター認定

今回のトレンチの観察結果をもとに、断層活動のイベント・活動間隔・最新活動時期等の、警固断層についての重要なパラメーターの認定が可能である。このパラメーターをもとに、断層活動の将来予測も可能である。この問題についての検討は、他地区の調査結果とあわせて5章で行う。