(1)既存ボーリング資料調査

調査地北部においては、警固断層は沖積低地の下に伏在しており、その位置は地表では確認できない。そこで、既存のボーリング資料を基に断層の位置を推定する作業を行った。地下地質データに基づく警固断層系の位置の特定は、最初に本断層の存在を明確にした文献@や、最近の文献Gにおいてすでに実施されており(使用した資料は異なる)、図4−2−2−1に示した位置に断層が想定されている。

今回の作業では、各ボーリングの位置と、その位置での第四系の下位の基盤(調査域北部の福岡市域では、古第三系もしくは花崗岩類、南部では花崗岩類)の出現標高を基に、基盤上限のコンター図を作成した。作業結果を図4−2−4−1に示す。この結果から、警固断層近傍の基盤上面の形状について、以下の事が読み取れる。

・福岡市域北部では、警固断層の想定位置付近に明瞭な北西−南東方向のコンター密集部(東側が低い)が示されている。この地域について検討した文献Gでは、基盤上面には断層両側で最大53mの比高差があること、一部では水平距離5mの間に約34mの比高差が見られること、このような急激な高さの変化は断層運動に起因していると考えることが妥当と指摘されているが、今回の結果もその指摘を支持するものとなっている。

・福岡市域南部から春日市北部にかけての地域では、ボーリング資料が少ないこともあるが、このようなコンター傾向はあまり明瞭ではない。これは、那珂川による浸食作用により、断層の影響が打ち消されてしまったものと思われる。

・さらに南方の春日市から大野城市、太宰府市、筑紫野市にかけてもボーリング資料が限られるものの、想定される警固断層系の位置・走向に沿ったコンターの配列が見られる。読みとれる基盤上面の傾斜は、最大も20/100程度であまり大きくなく、断層活動によって直接に形成された斜面と断定はできないが、何らかの影響は考えてもよいであろう。

また、前節で述べたように上記のコンター密集部の北東側に、幅1〜2qのグラーベン状の構造が見られる。この構造は、福岡市域から春日市にかけて比較的明瞭であり、その南方でも同様の傾向が筑紫野市付近まで続いている。これは警固断層(系)に加え、北東側の那の津断層、海の中道断層の断層群によって形成された構造と考える。