(1)久留米市街地東部

現在の地形はかなり人為的に改変されているが、昭和20年代の航空写真では、御井旗崎町から合川町にかけて、文献Fに示された朝妻断層に相当する位置に、西北西−南南東方向の比高1〜2m以下の低断層崖らしきリニアメントが認められる。さらに西方でも、青少年科学館の付近まで断続的にリニアメントが認められる。このリニアメントが通る地形面は、低位段丘面よりやや低い面である。時代の特定はできていないが沖積面として考えた。この断層の地表トレース上には筑紫国国府遺跡に地割れや噴砂が出現しており、近傍での断層活動を示唆している。

この位置より南方にも南筑高校の北側で上記断層から分かれて、ほぼ東−西に近い方向で国道沿いに断続的に高良川付近まで延びる比高数mの低崖が見られる。これは文献Fの千本杉断層に相当する位置である。この低崖は、筑後川の浸食の影響も受けていると見られるが、その直線性から見て、断層崖の性格を持つと思われる。このリニアメント上の遺跡では、弥生時代の遺溝が断層で切られているものが確認されており、松村(1990)で、西暦679年の筑紫国地震の活動によるものとされている。

なお、文献Fに示された合川断層に沿う地域には、断層変位地形は確認されなかった。

以上のように地下地質から推定された文献Fの3条の断層のうち、南側の2条については、地形的にもほぼ確認できた。特に朝妻断層については、さらに西方へ0.8q程度延びると判断した。断層の方向は、NNW−SSEないしE−Wである。