(1)調査結果

前述のあんずの里地区の南方に位置する。本地区では遺跡発掘調査が行われており、その作業の途中で下山委員によって試掘(筋掘り)が行われた。なお、遺跡発掘においては生活面に割れ目等の断層運動による痕跡は認められていないとのことである。

1 調 査 結 果

図2−4−2−2のあんずの里地区の地形区分図に、この地区の地形区分もあわせて示した。

この地区には、あんずの里地区を通るリニアメントにほぼ平行して西側に約180m及び300m離れた位置に2条のリニアメントが通っている。このうち、前者は深町池、新堤池付近の尾根筋を切る凹地から南方へ延びており、延長部では丘陵地と平地の境界が直線状に延び、低位段丘面及び高位段丘面上に低断層崖が認められる(写真2−4−3−1参照)。また、後者では前者程は明確ではないが、高位段丘面上に低崖がみられる。両リニアメントは地区南部では1条に収斂する。

2 表層地質調査

地形区分と同様に、図2−4−2−3のあんずの里地区の表層地質図中に、この付近の調査結果もあわせて示した。

この地区では、進成時の地質観察によって古期段丘構成層が、県道勝浦宗像線付近まで広がっていることが確認された。この分布の西方延長は、沖積面下に没していると推定される。この地区の南方約 1.3qのリニアメント延長部で、白亜紀の関門層群と古第三系が接している断層露頭が見出された(図2−2−3−1写真2−4−3−2)。これは、いわゆる基盤断層であるが、走向N45゜W、傾斜62゜NWであり、西山断層系のトレンドとほぼ同じである。

3 トレンチ調査

トレンチは、この地区を通る2条のリニアメント上で下山委員によって小規模な筋掘りとして実施された。

以下の記述は、下山委員による調査結果に基づく。

○トレンチ1

一番西側のリニアメントが高位段丘面を通る位置で行われ、基盤を構成する花崗閃緑岩と関門層群が接する断層が確認された。写真2−4−3−3に断層の状況を示す。

○トレンチ2

東側のリニアメントが低位段丘面を通る位置で行われた。地質状況を図2−4−3−1及び写真2−4−3−4に示す。ここでは、14C年代で約 11,000年BPを示す地層(新期段丘構成層中の粘土層)が断層によって切られ、約20p山側(北東側)落ちの変位を示している状況が確認された。一方、断層部を覆い、5世紀頃の土器を包含する地層は変位を受けていない。断層の走向はN20゜W、傾斜85゜NEで、リニアメントの方向と一致している。