4 今後の課題

今回の調査では、福井平野の地下深部における複数の地点で基盤上面に変位が確認され、上位の第四紀層にも累積的な地層の変形が認められた。しかし、地下浅部では明瞭な変位・変形として認めることはできなかった。よって、福井平野の地下深くには、過去にこれらの基盤上面および第四紀層を繰り返し変位・変形させた断層が伏在してはいるものの、その変位・変形は地下浅部までほとんど及んでいないことが明らかとなった。従って、従来指摘されていた福井地震断層や福井東側地震断層についても、地表に変位を伴う「地震断層」の定義に当てはまらないものであり、それらは小笠原(1949)の示した「深部断裂」と見なすのが適切であることが明確となった。

そのため、今回実施したような地下浅部を対象とした弾性波探査、ボーリング調査およびトレンチ調査では、それらの「深部断裂」の活動履歴を明らかにすることは不可能であることが明らかとなった。

今回の調査の大きな成果の一つとして、13世紀後半から15世紀に発生した強い地震動により形成されたと考えられる日本で最大級の噴礫を確認したことが挙げられる。しかしながら、13世紀後半から15世紀の間に福井平野において大きな地震が発生したとする記述は歴史資料に見当たらないことから、未知の歴史地震の発見と言える。

以上のことから、福井地震断層や福井東側地震断層の活動履歴により、それらの断層が再び活動することによる地震の予測は困難である。また、噴礫から未知の歴史地震が発見されたように、福井地方にいつ大地震が発生するか予測することも困難である。

福井平野における地震災害軽減のため、今後も詳細な地下構造調査に基づく地震動予測等の調査研究を推進していきたい。