3−3 噴礫について

今回実施したトレンチ調査の結果、1948年の福井地震以前の強い地震動により発生したと考えられる噴礫の跡が確認された。地質年代測定の結果、この噴礫の発生は13世紀後半から15世紀頃であると推定された。

福井平野で過去に発生した地震については、1948年の福井地震が知られているほか、寒川(1998)が、地表面下1m以深にある遺跡において現在の耕作土を除く地層に地震の痕跡(地割れと液状化に伴う砂層)を認め、福井地震以前の約4,500年前に強い地震があったと報告している。

今回見出された噴礫は、その産状、産出した土器片および放射年代測定の結果から、寒川の報告している約4,500年前(縄文時代)の地震以降で、1948年の福井地震以前のものといえる。

この噴礫の発見により明らかとなった問題点について、以下に示す。

噴礫に対応する歴史資料について

地質年代測定の結果、トレンチ調査により確認された噴礫の発生は13世紀後半から15世紀頃であることが明らかとなった。しかし、当地においてこの年代に相当すると考えられる過去の被害地震記録は、現在、柳ヶ瀬断層の活動によると考えられている正中2年(1325年)に近江北部で発生した地震のほかは知られておらず、今後の検討を要する。この頃を中心に、日本付近で発生した主な被害地震について理科年表より引用し、巻末に付す。

噴礫を発生させた地震について

噴礫は、礫率70~80%程度のやや淘汰のよい砂礫から構成され、最大径は15cm程度である。粒度分析の結果から、この噴礫は通常液状化しやすいと考えられている粒度組成の範囲から大きく外れていることが明らかとなった。これは、通常では考えにくい状況の下で噴礫が発生したと考えることができる。

堆積物の液状化および流動化は、主に堆積物の粒度組成に依存して発生するが、大礫を含む粗粒堆積物について考慮した場合、震源のごく近傍で、非常に強い揺れを受けて発生した可能性が考えられる。すなわち、過去にこの地方で大きな地震が発生したと考えられる。

噴礫を発生させた地震と福井地震の関連について

福井東縁断層帯の最新の活動は、1948年の福井地震である。また、それ以前の活動については、福井平野で発見された噴砂跡のデータに基づき、約4,500年前に強い地震があったと報告されている(寒川、1998)。

今回実施したトレンチ調査の結果、1948年の福井地震以前に発生した強い地震により形成されたと考えられる噴礫の跡が確認され、その地震の発生年代は13世紀後半から15世紀頃であることが明らかとなった。