(1)データ処理内容

@フォーマット変換(FORMAT CONVERSION)

磁気テープに記録されているデータ(SEGーD形式)を、処理ソフト用のデータフォーマットに変えて処理を行った。

A観測配置の定義(GEOMETORY)

処理を進めるために、全受振点および全発振点座標、測線展開方式、発振ー受振の組合せ、測線長などを定義した。座標や標高は測量結果および測定時に変更した結果などを用いた。

B編集(TRACE EDIT)

磁気テープに記録された生の測定記録は、車両通行ノイズの影響を強く受けたトレースなどが混在したため、全測定記録をチェックして、それぞれノイズの多いトレースを削除した。

C静補正計算

全測定記録に対して直接波および屈折波の初動を読み取り、タイムターム法などを用いて速度の遅い表層部の補正量(時間量)を計算した。

補正基準面は、標高30mとした。したがって、重合断面やマイグレーション断面上の時間0秒はすべて標高30mとなる。

D振幅調整(AMPLITUDE BALANCING,GAIN RECOVERY)

震源で発生した波は受振器に到達するまでに、球面発散やその他いろいろな原因で減衰する。これを補正したり、微弱な反射波なども判別しやすくするため、振幅調整を施した。

Eバンドパスフィルター(BAND PASS FILTER)

特定の周波数帯域だけを通過させ,反射波以外のノイズを除去してS/N比を向上させる。ローカット周波数およびハイカット周波数をそれぞれ5通り程度替えてテストを行った。

Fデコンボリューション(DECONVOLUTION FILTER)

反射波が震源をでてから磁気テープに記録されるまでに受けた波形の歪を取り除くことによって、処理断面上の反射波の波形を整えて分解能を高めたり、多重反射を取り除く一種のフィルター処理である。

予測フィルターなど2〜3種類のフィルター形式を用いて、フィルター長などのパラメータを変化させ、最も効果的なデコンボリューションフィルターを選定するテストを繰り返した。テスト結果より、今回はゼロフェイズデコンボリューションを用いた。

デコンボリューションテスト結果は巻末(巻末資料−2)に示す。

GCDPソーティング(CDP SORTING)

反射法測定記録の中から波線が同じ共通反射点(CDP=Common Depth Point)を通るトレースを集める処理を行った。

H静補正(STATIC CORRECTION)

測定記録から地表の高低差や弾性波伝播速度の遅い表層の厚さの変化による反射走時のばらつきを補正する処理するため、それぞれの受振点および発振点ごとに静補正計算で求められた量を用いて補正した。補正基準面は、補正計算の項で示すとおり標高30mに設定した。

I速度解析(VELOCITY ANALYSIS)

CDP記録からNMO補正の重合速度を求めるため、速度解析を実施した。速度解析は静補正を行った後および後述の残留静補正を施した後の計2回実施して、速度解析の精度向上を図った。代表的な速度解析結果を表3−3−2に示す。

表3−3−2 速度解析結果

J残留静補正(RESIDUAL STATIC CORRECTION)

静補正を施した後も発振点や受振点近傍の局部的な表層異常(極端に伝播速度が遅い層があるなど)は補正しきれないこともあり、反射波走時にばらつきが残る場合がある。このばらつきをなくすため、残留静補正を行った。速度解析を2回実施し、残留静補正もその都度実施した。

KNMO補正(NMO)

動補正とも云い、共通反射点記録を重合するために、各トレースの反射走時を垂直走時にそろえる処理である。2回目の速度解析結果を用いて処理を行った。

Lミュート(MUTE)

大きな反射角で反射してきた波は動補正後、波形の間延びとなって現れる。このまま重合すれば分解能の悪い記録が得られてしまうので、間延びの著しい部分を切り取るミュート処理を施した。

MCDP重合(CDP STACK)

ミュート処理後にCDP重合を行った。

Nマイグレーション(MIGRATION)

CDP重合処理は地下構造を水平構造と仮定しているため、傾斜した反射面や複雑な形状をした反射面を正しく表していない。これらを正しい位置や形状に戻すため、マイグレーションを行った。マイグレーション速度は速度解析で得られた速度を用いた。

O深度変換(DEPTH CONVERSION)

時間で表した反射断面を地表からの深度で表したデータに変換した。深度変換には速度解析結果や既存の検層結果などを用いて行うが、調査地近傍には検層結果がないため、速度解析を参考にして深度変換を行った。したがって、深度断面は変換誤差があることは否定できない。